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第701話 カムロ、チョウコウと弟子談義をする

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「ち、中距離戦じゃ勝ち目なんてないか。長老達のようなクズならともかく、怪力オバケでもまともなジジイを殴るのは気が引けるがなっ。竜爪乱打りゅうそうらんだ!」

「おおっ。はやい、はやい」


 異世界クマ国の代表たる、牛頭の仮面をかぶった足の見えない幽霊カムロは、極悪非道のテロリスト団体〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の輸送隊長にして、〝偽豪傑ズメエヴィチ〟なる竜人に変身した茶髪天然パーマの青年、左玄さげんチョウコウが目にも止まらぬ速さで繰り出すトンファーの連続攻撃を、老いてふしくれだった両の手ではねのける。


(先程の竜巻といい、チョウコウ。〝鬼神具・山鶏魔女バーバヤーガの鏡〟と疑似融合して、更にやるようになったっ。合体変身を実現したからか、生身の時以上に鋭い殴打だ。今の体調だときついが、なんとかするさ)


 カムロは、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の幹部三人を連続で仕留めた反動による筋肉痛がぶり返していたが……。奥歯を噛み締めて、ズキンズキンと痛む肩のこわばりを無視し、ポーカーフェイスを装った。

 

「ああ、それなら心配ない。チョウコウ、こんな年寄りがなぜ総大将をつとめ、前線に立つと思う? 武神スサノオの影武者という立場もあるが、今のところクマ国最強は僕だからだよ」

「最強って、本当に最強なやつがいるかっ。〝偽豪傑ズメエヴィチ〟に変身した時、俺のパンチは機関砲並みに速いし、要塞の装甲板だってぶち抜ける威力だぞ。そんな痩せた手でどうやって受け流しているんだよ」


 チョウコウの疑問は本心からのものだったろう。事実、竜の爪めいた装飾がされた彼の武器は、倉庫脇に並ぶ金属製のコンテナに衝突し、あたかも障子紙のように引き裂いているが、カムロには先程の竜巻同様に、まるで風船細工のように軽々とあしらわれている。


「チョウコウ、一対一の防御にはコツがある。相手の目線や筋肉の動きで先読みするのさ。特に僕の場合、下手に刀を持つより素手の方が得意でね」

「やべーぞ、このカムロとかいうジイさん。俺たちと同じ言葉を話しているのに、ワケわかんねえ」


 カムロは助言を贈るも、いわゆるジェネレーションギャップというものか、それとも根っこの常識が違うのか、チョウコウにはいまいち伝わらないようだ。


「おかしいな。弟子ならこの説明でわかってくれる気がするのに……」


 瞬間、カムロの脳内に、上半身裸で皮ジャンパーを身につけた金髪青年、五馬乂いつまがいと、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめが、あっかんべーと舌をだす光景が鮮明に浮かび上がった。


「は、反抗期の真っ最中な乂や紗雨はともかく、桃太君ならちゃんと伝わる気がするし」


 カムロは手刀を繰り出しつつ、額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたの顔を必死で思い出す。

 しかしながら、脳内の愛弟子もまた「無茶言わないでください」とばかりに両腕で×字をつくって、首を横に振っている。


「おいおい、お師匠さんよ。自信のない言葉と不安げな顔を見るに、やっぱりお弟子さんにも通じてないんじゃないの?」


 チョウコウは、カムロの風を切るような手刀を、〝偽豪傑ズメエヴィチ〟の籠手についたトンファーで防ぎつつ、疑わしげに念を押す。


「桃太君の場合、見るんじゃなくて、耳で風音を聞いたり、鼻で草の匂いをかいで攻撃の軌跡を判断しているようだから、僕とは少しやり方がが違うかもね」

「師匠が師匠なら、弟子も弟子だ。聴覚や嗅覚で攻撃を先読みするとかおかしいだろっ」

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― 新着の感想 ―
いやカムロさんよ、あんたも若い(?)時に同じことを言われたら「そんな非人間的なことができるか!」とツッコミ入れていただろうよ。 そして桃太君がいつか弟子を取ったとき 「こっちが風下だ、敵の動きを感じ…
>師匠が師匠なら、弟子も弟子だ。聴覚や嗅覚で攻撃を先読みするとかおかしいだろっ 牛仮面「部長とか普通にやってたと思うけど」
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