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カクリヨの鬼退治〜追放された少年が、サメの着ぐるみ少女と共に、勇者パーティに逆襲する冒険譚〜  作者: 上野文
第一〇部/第一章 カムロ、完全正義帝国に対して単騎親征す
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第699話 一騎討ち始まる

699


「武神カムロ。さっきも言ったが、アンタみたいなバケモノと真っ向勝負だなんて冗談じゃない。野郎ども、ここは俺に任せて先へ行けえ!」

「アハハっ。そうか。そうするのかっ」


 異世界クマ国の代表、牛頭の仮面をかぶった足の見えない幽霊カムロは、相対するラガーマンのごとき恵まれた体格の青年、左玄さげんチョウコウが仲間を庇う姿を見て、いたく感動した。


(これまで遭遇した犯罪結社〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟を指導する長老達が、罪なき人々を虐殺して恥もしない外道ばかりだったからな)


 カムロが仮面の下で満面の笑みを浮かべる一方、チョウコウの顔色は真っ青だ。茶髪天然パーマは冷や汗でびしょ濡れで、足はがくがくと震えている。


「砂ももう止まる。振り向かずに行けえ!」

「「おいチョウコウ隊長、あとで追いつくんだろうな。死んだら呪うぞ」」


 彼の部下達は隊長の身を案じつつも、指示に従い、食料に毛布、薬といった生活必需品を入れた背負い袋を手に撤退してゆく。


「当たり前だっ。だから、ガキどもに必ずメシと薬を届けてくれよ」


 カムロは今生の別れめいた挨拶を聴きながら、指に火を灯して己が身をしばる網やツタを引きちぎったものの、チョウコウに免じて――彼の部下を追うことはなかった。

 他に邪魔する者のいない一騎打ちというシチュエーションには、なかなかのロマンがあるからだ。


「あくまで仲間と子供達の為に時間を稼ぐか。見事なものだね、左玄チョウコウ。僕を相手に部下の生存と物資確保をやり遂げたその才覚、イカれた大量虐殺団に埋もれさせるのは惜しい」

「クマ国代表のジイサン。恥ずかしながら、小細工を溜め込むやり方は、元上司のオウモさんに習い、具体的な作戦は知り合いのイタルってガキに考えてもらったんだ。俺は引用しているだけだから、褒められても困るんだよ」


 チョウコウはそう言って体を沈み込ませると、下半身をバネのように使い、砂まみれの大地を蹴って、闘牛のごときタックルを浴びせかけた。


「チョウコウ。謙遜する必要はない」


 カムロは突進してくる青年の肩に片手をついてヒラリとかわし、空中からかかとおとしを見舞う。


「作戦をきっちり実行するのも、良い指揮官の条件さ」

「良い指揮官じゃないけれど、やるしかないからやるだけさ! クマ国の武神、アンタから逃げ切って見せる」


 カムロは本心から褒めたものの、チョウコウには一切の油断が見られなかった。

 若きマッシブな青年は、老いて痩せ衰えた幽霊がくりだす蹴り技を横ステップでかわし、ゴーンという音と、さっきまで自分がいた地面に大穴が開いている現実に恐怖しつつも……。

 不屈の闘志をあらわに強大な〝鬼の力〟を秘めた〝鬼神具きしんぐ〟らしき、首からさげた手鏡を昼の青空へかかげる。


「〝山鶏魔女バーバヤーガの鏡〟よ、我を写せ。たとえ偽りであっても、俺はヒーローとなる。舞台登場 役名宣言 ――〝偽豪傑ズメエヴィチ〟」


 その刹那、左玄チョウコウは鏡が反射する太陽の光に包まれ、リザードマンに似た姿へと変貌した。


「〝融合術〟――合体変身か? いや、何かが違う」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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うむ、虚勢であろうとも見事な啖呵
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