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第68話 〝炎猫鬼〟アイムを止めろ

68


 秘密基地奥にある広間から響く声は、交戦中のレジスタンスと〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟の団員達にも聞こえていた。


「矢上先生、〝豹口鬼(フラウロス)〟と〝炎猫鬼(アイム)〟って何?」

「フラウロスは魔法陣で縛らないと嘘を語ることで有名で、アイムはエジプトの女神が悪鬼に堕とされたとも伝わる、どちらもソロモン七二柱に数えられる強大な魔神よ」


 遥花が生徒たちの質問に答える間にも。

 黒山が変じた、全長五メートルの豹顔の魔人〝フラウロス〟が、天井に転移させた像や柱の残骸が雨のように降り注ぎ――。

 凛音が無理矢理変えられた、全長三メートルの四つ足の魔猫〝アイム〟が咥えた松明から放たれる炎が広間を焼き尽くす――。


桃太とうた君!? 紗雨さあめちゃん!? がい君!?」

「そんな、嘘でしょう!?」


 遥花達が救出に向かうすべもなく、桃太達は絶命を待つのみだった。否!


「乂、憑依解除リムーブマスクだ。紗雨ちゃん、やるぞお!」


 桃太は乂の仮面と黄金の短剣を一度外して、空飛ぶサメこと紗雨を抱きしめ、左手に巻くヒビの入った勾玉に力を込めた。


「舞台登場、役名変化チェーンジ――〝行者ぎょうじゃ〟。サメイクヨー!」


 黄金の短剣が錆び付くのと引き換えに、白銀の光がほとばしり、左手の勾玉が修復される。

 同時に、桃太は真っ黒な忍装束から一転し、白衣に鈴懸すずかけを羽織った法衣姿となり、左目の上には、紗雨が変じたサメ顔の仮面を被っていた。


「サメエエエドリル!」


 桃太は左手に水の掘削器ドリルを作り上げると、右手で黄金の蛇となった乂を掴んで地面を掘り進み、窮地を脱した。


「もはやわしを止められるものなどおらん。なんだとお!?」

「サプライズ? お前、サッカーを知らないようだな。勝負は延長戦ロスタイムの後だぜ!」

「乂、PK戦は残っているんだろうな? 俺は黒山を倒し、リッキーの仇を討つ。三縞代表のことは頼んだぞ!」


 桃太は乂を、凛音が変じた魔猫の方角へ投げつけた。


「ああ、桃太。アイツのことは任せておけ」


 黄金の蛇が光に包まれて、人間の肉体を取り戻す。

 深紅の瞳と美しいストレートの金髪を持つ美男子は、背中に『漢道』と刺繍した革ジャンを素肌の上に羽織り、太腿ふとももの付け根から裾まで広いドカンめいたボトムを身につけ、足には金属輪で補強したライダーブーツを履くという派手な格好で、ボロボロになった広間に着地した。


凛音りんね、こんな形で再会したくはなかったが、昔と違って、今のオレには頼れる相棒と、うるさいが可愛い妹分がいるんだ。やってみせるさ!」


 乂は黄金に輝く短刀を手に、巨大な魔猫を相手に、相撲でも取ろうとばかりに挑みかかる。


「ならば、俺サマも一枚噛ませてもらおう。五馬いつまがい、炎さえ乗り越えられればなんとかしよう」


 そして不良青年の隣に、両腕を失った灰色のざんばら髪の剣鬼が並んだ。


鷹舟たかふね俊忠としただ。嘘つき野郎め、この時だけは信じるぜ」

「俺サマは嘘ばかり吐いてきた。しかし、凛音だけは裏切らん!」

あとがき

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― 新着の感想 ―
[一言] 名前付きの役名は、元になった悪魔と関係があるのでしょうか。 もし能力か弱点に何かしらの共通項があるなら、ソロモン七二柱の知識が戦況を左右しそうですね。 鷹舟俊忠がここで助けてくれるってこと…
[一言] >うるさいが可愛い妹分 紗雨「頭が悪くて肉体労働しか役に立たない兄貴分だサメェ」
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