表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カクリヨの鬼退治〜追放された少年が、サメの着ぐるみ少女と共に、勇者パーティに逆襲する冒険譚〜  作者: 上野文
第一〇部/第一章 カムロ、完全正義帝国に対して単騎親征す
697/794

第690話 〝完全正義帝国〟の内情

690


 西暦二〇X二年九月上旬。

 〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟を名乗る犯罪結社は、異界迷宮カクリヨの侵攻に敗れて、地球から亡命するも……。

 八岐大蛇・第六の首ドラゴンリベレーターから与えられた〝鬼の力〟に酔って、数十万人に及ぶ大虐殺を引き起こした。

 異世界クマ国を統べる代表にして、牛頭に似た仮面をかぶる足の見えない幽霊カムロは、テロリストの首脳陣が巣食うコウナン地方南部へ単騎で攻め込み、手始めに主席行政官マアキを討つことに成功。クマ国だけでなく、地球と異界迷宮カクリヨ、三世界に向けて声明を発表した。


「〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟が引き起こした悲劇を見てほしい。

 我々クマ国は、何十万人もの尊い人命を踏み躙ったテロリストの蛮行を決して許さない。

 カムロの名のもと、軽挙妄動けいきょもうどうは必ず鎮圧する。

 また重犯罪者は指名手配し、地球側とも協議の上、裁きにかける!」


 この宣戦布告にも似た発信を受けた地球各国は……。

 最近悪化しつつあるクマ国との関係改善を目論んだか、それとも鬼畜外道の重犯罪者に地球へ戻ってきてもらっては困るのか、あるいは亡国の土地を奪うチャンスとみたか、即座に国際会議を招集して声明を出した。


「「〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟なる国家は、地球上に存在しない。地球とクマ国、両世界の平和を乱すテロリストに対し遺憾いかんの意を表明し、クマ国政府の捜査を支援するものである」」


 カムロの迅速果断な対応は、自身の勢力圏が安全地帯だと信じ込み、いざとなれば地球への逃亡を画策していた〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の指導者達を震撼させた。


「ふざけるな、敵対していた間柄とはいえ、同じ地球人だろうがっ。異界の獣にほだされたか、これだから資本主義にかぶれた愚者どもはっ!」

「最初は〝前進同盟〟に、次にゼンビンとリノーに注目させるはずだったのに。我々の名前がまるまるバレているではないか?」

「あの無能なガキどもめ、囮の役すらできないか!」

 

 卑怯卑劣な〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の首脳陣は、自分たちを支援してくれたクマ国の反政府組織〝前進同盟〟に虐殺の冤罪をきせ、次に育てあげた少年兵達に憎まれ役を押し付けることで、自分たちだけは安全を謳歌おうかしようと目論んでいたのだ。


「おやおや心外ですね。長老方に教えられた通りにやったまでですのに」


 しかしながら、生贄の羊として引き出された若者達もまた、悪意ある老人達の思惑を把握していた。


「鞭で何度も叩いて、〝やられる前にやれ〟と教えてくれましたのは、偉大なる指導者様方でしょう? 私は貴方達のように嘘をつく訳ではない。単に真実を必要な相手へ明らかにするだけです」


 新世代の代表たるリノーは、参謀というお飾りの地位を十全にいかし、自分たちを使い潰そうとする黒幕達の情報を、クマ国から潜入中の捜査員、五馬乂いつまがい三縞凛音みしまりんねへ流出させたのだ。

 その結果、カムロはこの時点では使い走りに過ぎないリノーとゼンビンの対処を部下に任せて、元凶とも言える指導者達が隠れ潜むコウナン地方南部を自らの足で徹底的に調べ始めた。


「くそ、軍隊ならば警戒もできる。しかし、仮にも国家代表の癖に、単騎で突っ込んでくるカムロという鉄砲玉をどんな手で防げばいい?」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>仮にも国家代表の癖に、単騎で突っ込んでくるカムロという鉄砲玉をどんな手で防げばいい? 首脳陣「「我々に関わっていると残業が増えるぞ!」」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ