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第686話 異世界クマ国の代表、ここにあり

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「はあっ!? たった一人で、一万体の死体から作り上げた、五千体の〝兵士級人形ソンダート〟と〝騎士級人形ルイツァリ〟を倒すだと、こんなことがあってたまるかあ!?」


 牛頭に似た仮面をかぶる足の見えない幽霊、カムロは右手に握る雷を帯びた長剣と左手に握る炎を噴く短剣で、空飛ぶ天使に似せた人形や戦車型のキメラといった大軍を撹拌かくはん。炎の海に変えて消滅させた。


「マアキ、屍体人形は確かに強力な兵器だ。しかし、どれほど数を揃えても、率いる将が無能ならカカシも同じだ。お前は人の上に立つ器じゃない」

「だまれっ、八岐大蛇の首ドラゴンリベレーターよ、約束が違うぞ。〝蛇の糸〟と屍体人形があれば、クマ国を陥落させられると言っていたじゃないか。たった一人に負けるはずがない!」


 カムロの圧倒的な強さを見て、死体人形を使るために、多くの罪なき人々を殺戮したテロリスト団体〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の指導者マアキは、白い長髪を逆立てて激昂する。

 怒りのあまり、〝鬼神具〟から限界以上の〝鬼の力〟を引き出しているのか、人狼となった手足の末端が、赤黒の霧や霜になり融解を始めていたが、愚かな鬼の使徒は自身の足元に奈落が待ち受けていることに気づきもしない。


「そうだ。こいつらを使って……」

「「ああっ」」


 感情的になったマアキが選んだ作戦は、最悪のものだった。

 燃える里の建物に隠した戦車人形を使って、人質にしようと試みたが、カムロにはバレバレだ。


「させると思うのか? 〝生太刀いくたち草薙くさなぎ〟」

「「GAA!?」」


 カムロが右手で空を薙いだ瞬間、彼を中心とした半径五〇〇メートル内が衝撃の嵐に見舞われて、戦車キメラを吹き飛ばす。


「カムロ、お、お前は、〝万人敵まんにんのてき〟だとでも言うのか?」

「バカを言え、そういう称号は、勇猛な指揮官に与えられるべきものだろう? お前達の蠢動しゅんどうを見逃した僕に、指揮能力なんてあるはずがない」


 カムロは瞳を閉じて、クマ国民の遺体を加工して作られた戦闘人形の残骸に向かって黙祷する。


「そうだ。僕はスサノオのように上手くはやれない。半世紀前から、八岐大蛇相手には後手ばかりだ」


 彼の自嘲するような独白が、なぜかマアキの闘争心に火をつけたらしい。


「何が八岐大蛇だっ、何がスサノオだっ。わ、わしを見ろ。わしこそ偉大な指導者。力も最強に決まっている!」


 マアキはなおも自己陶酔をやめずに、人狼の手から生えた剣のような爪をひらめかせて突撃した。


「草薙がなんだっ。〝鬼の力〟を使えば似たことなんてできる。わが力の前にひれふせ」


 マアキは口から竜のブレスに似た衝撃波を吐き出して、燃えおちた里の建物や、破壊された人形を更に砕く。


「「カムロ様」」

「心配ない」


 カムロは自らを心配する民衆に手を振って答えた。事実、白髪のテロリストが吐き出した衝撃波は、牛の仮面をかぶった幽霊に直撃したものの、まるで効いた様子はなかった。


「ならばっ、直接かっくらう。どうせマズイだろうが貴様の肉を寄越せ」

「お前のような煮ても焼いても食えない奴に言われたくはない」


 カムロは仮面をかぶった頭突きひとつで、マアキの牙を粉砕し、右手に握った雷の長剣と左手に握った短剣で爪を砕き、獣に堕ちた肉体を切り伏せた。

 同時に、力に溺れた反動がきたのだろう、マアキの肉体が〝鬼の力〟に食い尽くされ、〝赤い霧〟と〝黒い雪〟になって四散する。


「カ、カムロっ。このお化けジジイがあっ! い、いやだ、しにだぐなああびっ」


あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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>どれほど数を揃えても、率いる将が無能ならカカシも同じだ 飛空部隊を率いてたのにあっさり撃沈された笑軍の事かな?
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