第684話 完全正義帝国長老達の軽挙
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「〝前進同盟〟代表オウモの次に排除されるべきは、我らが〝完全正義帝国〟長老達のような、革命家きどりの老皇帝どもだ。革命に寄生する罪深いブルジョアは全員、此度の戦いで退場してもらう。異世界クマ国の武神カムロという強大無比な敵を惹きつけるために役立ってもらいましょう」
西暦二〇X二年九月上旬。
リノーの計略はすぐさま実行に移された。
〝完全正義帝国〟を主導する老人達の一人、主席行政官マアキをそそのかし、彼らが潜むクマ国コウナン地方の南部、キソの里に近いほどヒスイ川周辺で、隣人であったクマ国人を虐殺させたのだ。
「これこそ我が夢、我が力! 我が世の春がやってきたっ!!」
力に溺れたテロリストは、〝蛇の糸〟と呼ばれる八岐大蛇、第六の首ドラゴンリベレーター由来の鬼術で死体を加工した戦闘人形を増やさんと、周辺の村々を手当たり次第に襲った。
「マアキさん? どうして、私たちは貴方達が故国に帰れるように一緒に頑張ってきたのに」
「ゲハハ、荒れ果てた地球の祖国より、手近なクマ国の土地が欲しいのよ。獲物は食いでがある方がいいに決まっている」
マアキと呼ばれた老人は、右手にまるまるした糸玉を、左手に牙のついた金のネックレスを掴み、歓喜の叫びをあげる。
「〝鬼神具〟、〝飢狼牙〟よ、吼え猛れ。舞台登場 役名宣言――〝魔狼人〟!」
異世界クマ国で虐殺を繰り返す、元地球人のテロリスト団体〝完全正義帝国〟の主席行政官マアキは、ツノが生えた人狼の姿へと変身。
「これこそ、我が力。八岐大蛇、第六の首ドラゴンリベレーター様より与えられた〝蛇の糸〟よ!」
彼がテラテラと光る糸玉をかかげるや、殺された被害者の遺体を加工した兵器、空飛ぶ天使に似た〝兵士級人形〟や、獅子の頭と山羊の胴に蛇の尾を持つ戦車型キメラ〝騎士級人形〟が村へと雪崩れ込み、家々壊れ、田畑が潰されて、道橋が血で染まった。
「「ひ、ひどい」」
生き残った人々が抗議するものの、マアキは蛙の面に小便とばかりに、自らの悪業を恥とも思わないようだ。
「ゲハハ。異界の獣が人間の真似をするなど烏滸がましいわ。一万体の死骸から作り上げた五千の屍体人形でなぶり殺しにしてやろう」
人狼となったマアキは、かつての同胞に対し、狂ったような笑顔を浮かべて人形兵をけしかける。
父母が泣きじゃくる子供を抱き、兄が妹を、姉が弟を、老夫婦が互いに寄り添い、せめて最期は共にしようと力無く項垂れた。
しかし、その時。
「助けに来たぞ!」
異世界クマ国の代表であり、牛の仮面をかぶった足の見えない幽霊カムロが、あたかも天を割るように、空飛ぶ人形や戦車キメラを蹴散らしながら飛び込んできた。
「カムロ様、来てくださったのですか!」
辛くも生き残った人々が歓声を上げる中。
「今、そっちに行く!」
「GAAAA!」
カムロは、右手に握る雷をまとった長剣と、左手で掴んだ炎を吹き出す短剣をあたかもヘリコプターのようにぶん回しながら空を舞い……。
民衆を切り裂こうとした天使人形の四肢を焼き焦がした後、真っ二つに両断して火葬。更に人々を踏み潰そうとする戦車人形を逆に踏み台にして、十文字に斬り伏せた。
「カ、カムロだとおおおっ。異世界クマ国の武神、いや邪悪な皇帝め。なぜここがわかったあ? お前は我々に騙されてクマ国の反政府団体〝前進同盟〟を追いかけていたのではなかったのか!?」
あとがき
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