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第681話 葉桜千隼と芙蓉イタル

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「戦闘艦トツカは目立ちます。この船が空を動けば、テロリスト団体〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟にも必ず隙が生まれるはず。桃太君と紗雨ちゃんは、がい君とリンちゃんを助けてくださいね」

「はい、任せてください」

「行ってくるサメエ」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたと、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめは、恩師である矢上遥花やがみはるかと、焔学園二年一組のクラスメイトに戦闘艦トツカを託して船を降りた。

 そうして、桃太にとっての相棒であり、紗雨にとっては幼馴染でもある、行方不明の五馬乂いつまがいを救援すべく、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟が支配するコウナン地方北部へ向かおうとしたのだが……、この決定に異を唱える者が一人だけいた。


「お待ちください。出雲様、紗雨姫、私もご一緒します」


 異世界クマ国防諜部隊ヤタガラスの一員である、前髪の長い中性的なカラス天狗、葉桜千隼はざくらちはやである。


「すまない。葉桜さんは船に残って欲しい」

「出雲様。私はカムロ様より、貴方を地球に帰すまで、補佐をするよう仰せつかっています」


 千隼の言っていることは正しい。

 だが、桃太には、彼女に残ってもらいたい理由があった。


「俺たちが保護した避難民には、クマ国の反政府団体である〝前進同盟ぜんしんどうめい〟の関係者や、地球とクマ国……二世界の血を引く子供達がまじっている。政治的に危うい立場にいる彼らを守るために、交渉できる人が必要なんだ。葉桜さんなら、信じられる」


 桃太は千隼の顔をまっすぐに見て、彼女の手を取り、頼み込んだ。

 千隼はとっさに顔をそむけようとしたものの、背くに背けられず、顔が熟れたりんごのように真っ赤になった。


「わかりました。必ず紗雨姫とお帰りくださいね」

「大丈夫。必ず戻る」


 こうして桃太と紗雨は千隼とクラスメイトの見送るブリッジを出たのだが、扉が閉まるや否や……。


「ぷーんだサメエ」


 紗雨が桃太の背中をぽかぽかと叩いた。


「え、なに、紗雨ちゃん、どうしたの?」


 そんな桃太と紗雨を、同行する佐倉みずちと、避難民から水先案内人して抜擢された、女装した少年、芙蓉ふようイタルが見つめていた。


「うーん、やっぱり青春っていいなあ」

「みずちさん。あの二人は交際されているのですか?」


 イタルの質問を聞いたみずちは、ニコリと笑う。


「気になる?」

「ボクの父はクマ国人で、母は地球人でした。だから虐げられていたんですが、ここではそうじゃないんですね。正直言って、驚きました」


 まだ幼い少年、イタルの語る過去は悲壮だった。


「イタル君。きっと桃太君と紗雨ちゃんが力になってくれるわ。〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟を倒して、やり直しましょう」

「リノー達の後ろにいるのが八岐大蛇、第六の首ドラゴンリベレーターで、死体から無限の兵を作れるのに?」


 イタルが上目遣いで問いかけるも、みずちは胸を張って断言した。


「それでも桃太君はなんとかしてくれるし、カムロも、いいいえクマ国は勝つわ。ここは彼らが、そして貴方達が生きている世界だもの」

「信じます。実はこんなボクにも優しくしてくれた、近所のお兄さんがいるんです。輸送隊長をやっている左軒さげん長虹ちょうこうという人です。もしも見つけたら、降伏するよう伝えてください。それと、この手紙を渡して欲しいのです」

「頼れるお兄さんなのね。ええ、カムロに言っておくわね」


 カムロ率いるクマ国軍と、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の激突は間近に迫っていた。


「みずちさん、イタル君。そろそろ行きましょう」

「「はい」」

「出発サメエ!」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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>やっぱり青春っていいなあ WA男性陣「「え~、これより第666回出雲対策会議を始める!」」
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