第680話 戦闘艦トツカの役割分担
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「では今後、祖平様をキャプテン、柳様をチーフナビゲーターとお呼びします」
「オオバカリさん、よろしく」
「出雲、船の運転ならまっかせて」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、空飛ぶ戦闘艦トツカを降りて冒険者パーティ〝W・A〟本隊とは別行動をとることを決め、瓶底眼鏡をかけた白衣の少女、祖平遠亜に艦長代理を、サイドポニーの目立つ式鬼使いの少女、柳心紺に航海長を委ねた。
「部隊を分ける前に一度、オオバカリさんをフォローする班分けも決めておこうか」
また彼女達だけにとどまらず、戦闘艦トツカの運航維持を総括する付喪神オオバカリを支援するため、他団員の役割分担も決まった。
「機関長か。技術はこれから学んでいくとして、力仕事なら任せてくれ。あと酔い止めの結界は艦全体で頼むマジで」
総員参加の会議で相談した結果――。
モヒカンが雄々しい重装備の〝戦士〟林魚旋斧ら、力自慢の猛者たちが機関室と動力関連部門に配属されて、オオバカリだけでは管理しきれない、細やかな制動や燃料管理を手伝うことになった。
彼らの助力があれば、空いたリソースで酔い止めの結界の効果範囲を広げられると約束されたのは、団員達には大きな希望となった。
「通信長ね。敵を見つけて、情報を送る。おれ達の役目は陸でも空の上でも変わらない。貴方に負けないくらい、やれるようになりますよ、出雲サン」
また野生味溢れる小柄な〝戦士〟関中利雄と、目端の聞く遊撃部隊が、通信部門を担当。
常葉山の戦いで桃太が担ったような、通信や測距の補助を執り行い――。
「砲雷長か。戦艦トツカの兵装は〝鬼術〟に近いから、我々がやろう」
髪の毛を七三にぴっちり分けた羅生正之がまとめる〝黒鬼術師〟部隊が、砲雷班を結成。自動迎撃に留まらない、手動での火器制御をすることになった。
「コケーッ。え、衛生長としてみんなをお守りしますわっ」
加えて赤い髪を二つのお団子状にまとめたグラマラスな少女、〝鬼勇者〟六辻詠を神輿に集まった〝白鬼術師〟部隊が衛生、医療を担当する衛生班を結成――。
「技術長か。アハハっ、大船にのったつもりで任せておけ、〝こんなこともあろうかと〟や〝我に秘策あり〟と叫ぶための秘密兵器をバシバシ作ってやろう」
「「いらんことはせず、普通にやれ」」
また昆布のように艶のない黒髪が目立つ少女、伊吹賈南はウメダの里にある地下迷宮〝U・S・J〟を深層までもぐった実績が評価され……、彼女を旗頭に、工作に強い〝斥候〟部隊員が集結し、船の整備班を務めることになった。
「遥花先生、皆をお願いします」
そうして桃太は、冒険者パーティ〝W・A〟の総指揮官として矢上遥花を指名した。
「わかりました。生徒達はわたしが守ります」
遥花は桃太と紗雨の肩を抱いた。
じんわりと温もりが伝わってゆく。
「戦闘艦トツカは目立ちます。この船が空を動けば、テロリスト団体〝完全正義帝国〟にも必ず隙が生まれるはず。桃太君と紗雨ちゃんは、乂君とリンちゃんを助けてくださいね」
あとがき
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