第675話 桃太と千隼のコンビネーション
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「GA? GAAA!?」
「こ、こんなことがあっ!!」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、中性的な鴉天狗の少女、葉桜千隼と協力し、半球状のボウルめいた竜巻結界と、衝撃波を固定した巨大なプロペラ刃を構築。
全長三〇メートルに及ぶ巨大なドラゴン〝陸竜人形〟を、その巨体に匹敵するハンドミキサーでズタズタに引き裂いた。
「よしっ、ちゃんと効いている。千隼さんが力を貸してくれたおかけだ」
「いいえ、出雲様のお力が凄いのです」
桃太と千隼は、パァンと互いの手を打ち合わせる。
さすがにテロリスト団体、〝完全正義帝国〟の真なる切り札だけあって、恐竜めいた人形を一撃必殺とはいかなかったものの、塔のように巨大な前足を落とし、上半身と下半身を繋ぐ腹部にも大穴をあけていた。
「くそ、屍体人形は生きていないから、死ぬこともないのに、どうしてこうなるっ」
完全正義帝国〟の指揮官である、白髪の優男リノーは、半壊した〝陸竜人形〟を蛇の糸で応急修復し、塔ほどもある怪獣の後ろ足で蹴飛ばそうとした。
「「当たるものかっ」」
しかしながら、桃太と千隼は息を合わせて左右へ跳躍し回避したあと、阿吽の呼吸で反撃に転じた。
「その足、封じます。出雲様は攻撃を続行してくださいっ」
千隼が鞭のようにしなり、ワイヤーロープのように伸びる桜色の刀身をもつ蛇腹剣で、暴れる怪獣の後ろ足や、背から生えた傘の骨めいた翼を捕縛。
「千隼さん、任せてくれっ」
桃太は、千隼が伸ばした蛇腹剣の拘束を伝うように、巨竜に空けた穴の直下、腰部へと登り、両手を突き出して衝撃波を浸透させた。
「リノーっ、人の死を弄ぶ悪事もここまでだ。我流・〝鎧通し〟!」
すると、恐竜めいた人形は重量バランスを保つことも出来ずにフラフラと千鳥足となり、遂には山の木々を数百本まとめてバキバキと折りながら、どうと仰向けに倒れた。
「クソガキめ、クソガキがっ。選ばれた我々が屍体を使ってやっているんだから、感謝すべきはそちらだ」
「GAAA!?」
リノーは、狂ったように絶叫した。
屍体人形は大きさの違いこそあれ、八岐大蛇、第六の首ドラゴンリベレーターからもたらされた蛇の糸で、陶器めいたパーツに変えた屍体を動かしている。
桃太が螺子回転刃で〝陸竜人形〟の腹部を縫い合わせた蛇の糸を絶ち、〝鎧通し〟で残る陶器パーツに甚大なダメージを与えた結果、もはや動かしようもなく崩壊を待つばかりだ。
「何が使ってやっているだ。何が人形だから死なないだ。勝手なことを抜かすな人殺し。我が〝鬼神具・蛇切丸〟よ、この悪鬼を討つ。奥義、〝桜雲絶景〟!」
さらに、桃太が地へたたき伏せた〝巨竜人形〟に対し、千隼が桜色の蛇腹剣を振り回して追撃。
恐竜めいた死体人形の土手っぱらに空いた、傷口から体内を切り刻み、上半身と下半身を完全に分断する。
「まだだ! 〝陸竜人形〟よ、私をとりこめ。カムロだけではなかった。こいつらも生かしてはおけない。八岐大蛇・第六の首ドラゴンリベレーター様の天敵となりかねん」
リノーは、自らの手で虐殺した死体で作り上げた、全長三〇メートルの兵器、〝陸竜人形〟の口内へと飛び込んだ。
すると蛇に似た糸が、彼の華奢な肉体を取り込んで、頭部額の中央へと誘導、埋め込んだではないか。
「馬鹿なことをするな、リノー。そんなことをして何になる?」
「我々の同胞の遺体をどこまで弄べば気が済むんだ!」
あとがき
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