第674話 螺子回転刃は陸竜人形を切れるのか?
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「もうこれ以上、誰も殺させはしない。これだけ〝鬼の力〟が激突したんだ。大気も揺れて、〝この技〝を使える条件は満たされた。螺子回転刃でぶっ飛ばしてやる!」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、全長一〇〇メートルの空飛ぶ戦闘艦トツカと、全長三〇メートルの陸を歩く巨大怪獣〝陸竜人形〟の交戦で、〝鬼の力〟が渦巻く空の上から急降下しつつ、〝巫の力〟を発動させ、黒い瞳を青く輝かせながら、手のひらに衝撃波を生み出した。
「役得役得……。ではなかったっ。風の鬼術で援護します! そのための補佐役ですからね」
桃太の腹に手を回し、背中から抱いて飛ぶ前髪の長い中性的な鴉天狗、葉桜千隼は頬を赤く染めてうっとりしていたものの、決着を前に心機一転。黒い瞳を〝鬼の力〟で赤く輝かせながら、クマ国祖先伝来の鬼術を使って複数の竜巻をつくりあげる。
「バカめ、とんで火に入る夏の虫だ」
「「GAA!」」
一方、テロリスト団体〝完全正義帝国〟の指揮官である白髪の優男リノーは、二対の棍棒から蛇糸を繰り出して、〝陸竜人形〟だけにとどまらず、先ほどの同士討ちを生き延びた空飛ぶ天使に似せた兵器〝兵士級人形〟や、頑丈な戦車キメラ〝騎士級人形〟五〇体をけしかけ応戦する。
しかし、時既に遅い。
「効くかそんなものっ!」
「悪党め、年貢の納め時です。神妙に縄につけ!」
塔のごとき分厚く大きな足を持つ怪獣も竜巻に包囲されては思うように動けず、戦車キメラの砲弾は衝撃波に巻き込まれて即時爆発し、偽天使人形が投げた槍も巻き込まれて四散する。
爆発の連鎖は更なる爆発を呼んで、衝撃波の包囲網を更に厚くし、取り込んでゆく。
「なんだ? 竜の動きが鈍い、砲弾と槍が破壊されるだとっ。竜巻が衝撃の結界に変化して、われわれを包囲しているのか?」
リノーもここに至り、自身が窮地に追い込まれたのだと理解する。
たった今地上に着地したばかりの桃太と千隼は、衝撃波と竜巻を加工して作った半球状の反射結界で、怪物の軍団を包み込み、閉じ込めていた。
「こうなれば毒のブレスでもろともっ」
「やらせないんだサメエっ。でも、桃太おにーさんのパートナー枠を千隼さんに取られちゃったみたいで、なんだか複雑なんだサメエエ」
リノーはやぶれかぶれになったか、〝陸竜人形〟の毒ブレスを自爆も恐れずに吐き散らそうとするも、空飛ぶ戦闘艦トツカにのった銀髪碧眼の少女、建速紗雨が結界内部の水を使って鬼術相殺のシャボン玉を作って阻止。
「ありがと、紗雨ちゃん。くらえ、我流・〝螺子回転刃!〟」
「紗雨姫、心配ご無用です。我が感情は、愛……親愛。そして、リノー、覚悟してください。私自身が受けたからこそわかります。出雲様の必殺技は痛いですよ!」
その隙に、桃太と千隼は協力して必殺技を発動させた。
「たかがカトンボ二人、ぶっ殺してやる。数はこちらが多いんだっ。お前達の薄っぺらい攻撃では〝陸竜人形〟の装甲一枚破ることはできやしない」
「いいや、リノー。屍体を弄ぶのはここまでだ!」
「今こそ愛じょ、ごほん。友情の連携必殺技を目に焼き付けなさい」
リノーは自信満々で煽るものの、桃太と千隼は衝撃波のプロペラ刃で、竜巻の結界の中をハンドシェイカーのように攪拌。
「「GA!? GAAAAA!?」」
〝兵士級人形〟の翼に見せかけた蛇の糸や、〝騎士級人形〟の装甲を構成する陶器めいたパーツを残さず消し飛ばし……。
「「刺身になれえええっ」」
〝陸竜人形〟の厚い鱗状の装甲板をもチェーンソーの要領でズタズタに切り裂いた。
「GA? GAAA!?」
「こ、こんなことがあっ!!」
あとがき
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