第673話 期待を背負って
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「冒険者パーティ〝W・A〟の底力を見せるぞ!」
「出雲サン以外は、モブだと舐められちゃあ困ります!」
「たった一人で五〇人に勝てると思うなあ!」
全長一〇〇メートル、幅一〇メートルの空飛ぶ戦闘艦トツカは、全長三〇メートルの巨大な怪獣〝陸竜人形〟との交戦中――。
砲弾を際限なく浴びせかける戦車を模したキメラ〝騎士級人形〟、空を飛ぶ天使に似せた〝兵士級人形〟による横からの奇襲を受けたため、窮地に陥った。
しかし船の艦橋に詰めていた、モヒカンが雄々しい林魚旋斧をはじめ、焔学園二年一組の生徒達が防衛や迎撃の鬼術を放ち、そのことごとくを祓ってみせた。
「皆様、艦橋と周辺廊下一帯に酔い止めの結界を張りました。頑張ってください」
「「うおおお、尊厳を守るためにも早くぶっ飛ばすぞ」」
戦闘艦トツカから放たれる火球や氷柱、風刃や雷矢といった鬼術は、〝陸竜人形〟の厚い装甲こそ抜けなかったものの、〝騎士級人形〟の脚部を破砕し、〝兵士級人形〟の頭や胴を焼き払うなど、回復が追い付かないほどの大打撃を与えていた。
「「GAAAAA!? GAAAAAA!?」」
「雑兵めっ。いい気になるなっ」
テロリスト団体〝完全正義帝国〟でただ一人生き残った指揮官、白髪の青年リノーは、味方を粛清した時と同様、力任せに戦闘艦トツカを排除しようした。
が、巨大怪獣の大ぶりな攻撃では、自らが操る戦車キメラや偽天使人形と巻き込んでしまうと知って、どうしても思うように攻撃できない。
そもそも、一〇〇体もいる戦闘人形を一人で差配することに無理があるのだ。
「そういえば、我らが手にかけたクマ国反政府団体〝前進同盟〟代表のオウモが言っていたな。〝一千年前に八岐大蛇ら異界の軍勢から人々を守ろうと戦った火龍アテルイ。彼が残した船がクマ国のどこかにある〟――と。まさか出雲桃太と冒険者パーティ〝W・A〟の手に渡っていようとはっ」
リノーは自身が擁する屍体人形が続々と倒れる中、一般冒険者達にいっぱい食わされたと知り、なおさら怒りで頬をひきつらせた。
「あの船には、乗員の能力を船を通して拡大できる力があるというのか。どこまでも鬱陶しい! だったら、何度でも作り出すまで」
「防御サメエエっ!」
「衝撃を逸らしつつ後退!」
「「GAAAAA!?」」
かくしてリノーは感情任せに、〝陸竜人形〟から毒ブレスを吐き出して、自らが操る屍体人形の半分五〇体を破壊したものの、代わりにトツカを後退させることに成功した。
「脆い脆いっ。所詮は資本主義に毒されたクソガキどもよ。八岐大蛇、第六の首ドラゴンリベレーター様より与えられた我が軍勢は無敵。たとえ〝騎士級人形〟と〝兵士級人形〟を失おうとも、お前達を殺して新たな人形を作ってやる」
リノーは、己の優位を確信したか冷静になり、三日月のように口を歪めて笑った。
しかし、それは自らのミスに気づいていない愚かさの証明に他ならない。
「いいえ、貴方にそんな機会はない。出雲様、行きましょう」
「ああ、やろう、千隼さん。皆に最後の切り札を任せてもらったんだ。引導をわたしてみせる!」
なぜなら両陣営の視線が大規模交戦に集中した隙をついて、戦闘艦トツカの下部ハッチが開き……。
飛行能力を持つ前髪の長い中性的な鴉天狗、葉桜千隼が、冒険者パーティ〝W・A〟の最強戦力たる、額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太を抱きしめながら急降下していたからだ。
「もうこれ以上、誰も殺させはしない。これだけ〝鬼の力〟が激突したんだ。大気も揺れて、〝この技〟を使える条件は満たされた。螺子回転刃でぶっ飛ばしてやる!」
あとがき
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