第666話 空陸の敵にどう対処する?
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「賈南ちゃんの言う通りサメエ。無理矢理操るところは、テロリストに堕ちた勇者パーティ〝S・E・I〟の親玉だった四鳴啓介に、変身させるのは、〝K・A・N〟の七罪業夢に似ているけど、より悪どく洗練されているんだサメエ」
サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨 は、空飛ぶ戦闘艦トツカのブリッジから、故郷の民衆を虐殺し、戦闘人形へと変えた侵略者の蛮行を食い入るように見つめていた。
「ひょっとして、八岐大蛇・第六の首ドラゴンリベレーターは、俺たちが倒した他の首から戦術を学習したのか? これが〝完全正義帝国〟の秘密戦力!?」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太もまた艦長席で怒りに奥歯を噛み締めていた。
彼らが乗る火龍アテルイが残した遺産、戦闘艦トツカは間違いなく強い。
しかし、虐殺した民間人の死体から軍勢をつくりあげる大蛇の力を見てしまうと、単艦で戦争をどうにかできるかというと難しそうだ。
「左一〇時方向から攻撃の音がくる。オオバカリさん、ここは反撃しないとダメだ。守っていたら、押し切られる」
「マスター、お任せください。当艦は回避しつつ、艦首魚雷再装填、撃ちます」
桃太の指示に従い、船の頭脳たる付喪神オオバカリは飛来する敵砲弾を避けつつ、タチウオに似た魚雷を二発発射したものの……。
「GAAA!」
戦車キメラは尾から発する氷の銃弾や獅子の口から打ち出す炎の砲弾に加えて、タテガミからも雷を発して対空砲火の弾幕を展開。
「「GAA!?」」
一発の空中魚雷は突破できずに爆発して塵と消え、もう一発は戦車キメラ三体を巻き込んで半壊させたものの、蛇糸を中心に陶器状のパーツが組み合わさって再生した。
「出雲桃太、半端な攻撃が通じないのはこちらも同じですよ。たいした船ですが、見たところまだろくに使いこなせない様子。我らの威光に怯えながら死になさい」
「「なぁに寂しくはないだろう? そこの二足歩行の獣達もすぐに送ってやるぜ」」
「「たすけて、たすけて」」
〝完全正義帝国〟の指揮官リノーが操る飛行人形と、部下の一般指揮官操る砲撃人形の猛攻は凄まじい。
トツカの巨体で守ってなお、攻撃の余波が逃亡中の避難民達をかすめ、血飛沫がまった。
「くそ。どうする、どうすればいい」
「マスター、このまま兵器人形を相手にしていては埒があきません。他の敵は放置して敵指揮官リノーへ接近し、精密狙撃を狙います」
桃太は、オオバカリが提案した作戦を聞いて、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
「オオバカリさん、〝完全正義帝国〟を倒すのに、他に手はないのか?」
桃太はオオバカリの提案が、苦し紛れのギャンブルに等しいものだと気づいていた。
が、いかんせん、彼も空中戦の経験は少なく、懸念は曖昧模糊なものにとどまってしまう。
「オオバカリさん、いけません。
右前方の五〇〇メートル先には、機動力に長けた飛行タイプ〝兵士級人形〟が、左前方の一〇キロメートル先には砲撃戦用キメラ〝戦車級人形〟が待ち構えています。
この二つを無視して、正面二〇キロメートル先にいるリノーを仕留めるのは困難です。そもそも、この船が牽制をやめれば、クマ国の避難民が狙われてしまう」
桃太の恩師である矢上遥花は即座に状況を分析、桃太の心配を具体的な言葉にして訴えてくれた。
「矢上遥花様。危険性は承知しています。ですが、このままでは全滅を待つばかりです。他に打開策があるのですか?」
「それは……」
しかしながら、遥花また空戦に不慣れなため口を紡ぐ。しかし、この窮地で攻略法を見出した空前慣れしたコンビがいた。
「異世界クマ国の民間人を守りつつ、〝完全正義帝国〟の戦闘人形軍団を倒す打開策ならあるよ、ね、遠亜っち」
「心紺ちゃんと二人で考えたんだ。出雲君、矢上先生、話を聞いてくれる?」
あとがき
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