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第664話 屍体人形進化

664


「乂が動画で言っていた、〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟が持つわけのわからん戦力って、この屍体人形達のことか!」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、異世界クマ国で虐殺を引き起こした元地球人のテロリスト団体〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟の指揮官たる、白髪の優男が自らの手で積み上げた民間人の遺体を人形兵器に変える惨状を見て、思わず声をあげた。


「カムロジイチャンや、オウモさんが止められなかったはず。こんな非道、考えつかないもの!」


 サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨が、特徴的な言葉遣いも忘れて真っ青になり――。


「無から万の軍勢が現れたのですから、異世界クマ国を代表するお二方が〝完全正義帝国〟《スプラヴェドリーヴォスチ》の後手に回ったのも無理はありません。殺せば殺しただけ戦力が増えるだなんて、まさに〝鬼の力〟。悪鬼の所業です」


 焔学園二年一組の生徒達を導く立場にある担任教師、矢上遥花やがみはるかも、白皙はくせきの頬から血の気が引いていた。


「おやおや、空飛ぶ戦艦とは驚きました。狐狩りをしていたら、とんでもない大物を釣り上げたようです。ワタシはリノー。我らが総大将、第六の首ドラゴンリベレーター、一の家臣です」


 戦闘艦トツカの集音器が優秀なのか、それとなる敵の拡声術が派手なのか、里民を虐殺した殺人鬼は力強い声で堂々と名乗りをあげる。


「オオバカリさん、声を繋いで。リノーとやら、八岐大蛇・六の首が黒幕か?」

「黒幕とは失礼な。我々を生のしがらみから解放してくださるのですよ?」


 桃太はリノーのふざけた言い分に激昂した。


「なにが〝解放者リベレーター〟だ、人殺し! 今すぐ〝殺人鬼マーダー〟か、〝独裁者デスポット〟とでも名を改めろ!」

「おやおやそんなに大声で叫ぶものじゃありませんよ。いわゆる価値観の相違ですね」


 桃太が怒りのあまりスピーカーを通して糾弾するものの、リノーは一顧だにしない。


「よせ、出雲桃太よ。地球史においても解放者を名乗った独裁者なんぞありふれているだろう? わらわが言うのもなんじゃが、ひとまず冷静になって、情報収集につとめよ。さっきも言ったが、ここはすでに〝戦場〟だ。秘密兵器のひとつやふたつ隠し持っていても不思議はないぞ」

「すまない、賈南さん。……ってあれっ」


 昆布のように艶のない黒髪の少女、伊吹賈南いぶきかなんが桃太の裾を引いたことで冷静になるも、彼女はうっかりか、それとも意図的にか、船にのっているのが冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズであると、言外に明かしてしまった。

 

「ほう、貴方がオウモが警戒していた、日本の新たな勇者と名高い出雲桃太とその仲間達ですか。さしずめクマ国から強力な兵器を貸し出され、調子に乗っているといったところですか。確かに兵士級人形ソンダートでは相手にならないよう。ならば騎士級人形ルイツァリを投入すると致しましょう」


 リノーは両手に携えた棍棒を空に掲げて、声高々と自らの役名を宣言。


「〝鬼神具きしんぐ〟、〝支配の連接棍棒(ルールメイカー)〟よ、糸を吐け。舞台登場ぶたいとうじょう 役名宣言やくめいせんげん――〝人形遣い(ドールマスター)〟!」


 その直後、空飛ぶ異形の怪物たちは、トツカの左前方一〇キロメートル先にある丘上へ落下しながら次々に衝突。

 陶器めいた肉体のパーツが一度バラバラになったあと、積み木や、プラスモデルの部品ランナーを組み上げるかのように重なって、全長六メートル、高さと幅、それぞれ三メートルはあるだろう重戦車めいたキメラへ二〇体へと変貌した。

 

「「なんじゃありゃああ!?」」

あとがき

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>「カムロジイチャンや、オウモさんが止められなかったはず。こんな非道、考えつかないもの!」 いや、カムロは学生時代のゲームの死霊術師とか金鍍金をはじめとする邪悪竜の僕達との戦いの記憶があるから考えつい…
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