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第654話 地球の冒険者パーティは、異世界クマ国に介入できるのか? 

654


桃太とうた君、話は聞かせてもらったぞ。クマ国内の活動許可が必要ならば、お姉ちゃんに任せるといい!」


 皆のお姉ちゃんを自称する、鴉の濡羽がごとき黒髪の美しい二〇〇〇年を生きる付喪神にして、ウメダの里を治める実力者……。

 田楽おでんは会議室となった広間に入室早々、地球から来た冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟に対し、鶴の一声をあげた。


「ありがとうございます!」

「さすがおでんオネーチャン、話がわかるサメ」


 パーティ代表である額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたと、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめは喜色満面の笑顔で礼を告げる。


「おでんお姉様まで、おやめください」

「千隼ちゃん。お姉ちゃんの話を聞いておくれ」


 前髪の長い中性的な鴉天狗、葉桜千隼はざくらちはやは、それでもなんとか喉奥から言葉を絞り出そうとしたものの、おでんが桃太達の援護を始めた。


「そも、クマ国人が地球人に仕事を斡旋あっせんすることは法律上も認められている。本来は異界迷宮カクリヨの襲撃から保護した地球人を対象とする条項じゃが……。今回のような非常事態には、里長の判断に基づき柔軟に運用できるよう附則事項が明記されている」

「ひ、非常事態とは限りません。カムロ様の判断を仰ぐべきですし、……その、今では反政府組織〝前進同盟ぜんしんどうめい〟をまとめる立場になったといえ、オウモ様はかつて政府重鎮として辣腕を振るわれた方です。〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟を名乗る暴徒の反乱ごとき、すぐに鎮められることでしょう」


 千隼は、己が生まれたクマ国という国が平和であると信じていた。

 ゆえに、現実の惨劇よりも胸中の信仰を優先し、目を逸らしたのかも知れない。


「千隼さん。師匠はカムロは異変を察知し、先月からヒスイ河へ乗り込んでいた。オウモさんも部下を派遣していた。その上で今回の事件が起こったんだよ」

「ジイチャンは強いし、オウモさんはしたたかだけど、無敵なんかじゃないサメ。過大な評価はやめるサメ」

「千隼よ、桃太君と紗雨ちゃんの言う通りじゃ。カムロが予期しながら初動対応にしくじり、オウモが構成員を多数失うようなことは、まずなかったことじゃ。これが非常事態でなくてなんだという?」

「じ、情勢が不透明だからこそ、異世界の客人を踏み込ませるべきではないと申し上げています」


 千隼の主張は常識的だった。

 しかし、平時であればともかく、混沌の中では、彼女の輝きはかげってしまうだろう。


「千隼ちゃん、聞きなさい。

 そうこう言っているうちに人は死ぬよ。カムロとオウモが把握し損ねていた〝完全正義帝国〟の隠し球、動画内で乂君が言っていたところの〝わけのわからん戦力〟が今もコウナン地方で暴れ回っている。

 わしらクマ国と、地球にとって共通の敵である、〝異界迷宮カクリヨの王〟八岐大蛇の首か、準ずる強大な鬼が動いていても不思議はない。つまり、二つの世界の危機なのじゃ!」

 

 こうなるとおでんの独壇場で、千隼はたじたじだった。

 長きにわたり里の顔役として政治に携わってきた老獪ろうかいな付喪神と、若手ホープといえど小隊長にすぎない若き鴉天狗では、踏んだ修羅場の数が違いすぎた。


「わしは元々、ウメダの里からも救出部隊を派遣するつもりじゃった。ゆえに、この地を治める顔役として、クマ国の法に基づき、桃太くんたち冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟へ、乂君の指定したコウナン地方北部、常葉山にて避難民救出を依頼しようと思う」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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>情勢が不透明だからこそ、異世界の客人を踏み込ませるべきではないと申し上げています 乂「俺もリンも地球人だぜ!」
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