表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
650/793

第643話 乂の役名と奮戦

643


「リン、今からカッコつけるから、ちゃんと録画しておけよ」


 天狗の面を横にかぶり、一本足の高下駄を履いて、山伏のような服装に身を包んだ金髪の長身少年、五馬乂いつまがいは、招き猫の式神を使って情景を録画しているのだろう幼馴染おさななじみ三縞凛音みしまりんねに向けてウインクする。


舞台登場ぶたいとうじょう 役名宣言やくめいせんげん――〝二刀剣客ツーソードフェンサー〟」


 そうして乂は、〝鬼の力〟の影響を受け、うれたホオズキのように赤く輝く瞳で、クマ国の反政府団体〝前進同盟ぜんしんどうめい〟から離反したという過激派の元地球人テロリスト団体〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟をにらみつけ、錆びた短剣を向けた。


「イッツショータイム! 〝前進同盟〟も好かんが、多くの民間人を巻き込み殺した〝完全正義帝国スプラヴェドリーヴォスチ〟のやり口は目に余る。ここでぶっ飛ばしてやるぜ」

「おい、乂とやら。刀というより、ナイフが一本しかないようだが?」


 しかしながら、五人減って二五人となった犬面の兵士たちのうち、唯一素顔を見せた髭面の敵指揮官から、容赦のない指摘をうける。


「ウェイトアセカンド(ちょっと待ちな)! 別にナイフ一本使いが二刀流剣士を名乗ってもおかしくないだろ?」

「「シンショウ隊長の言う通り、おかしいわ。というか、それは詐欺だろう!」」


 犬の鬼面をかぶる兵士たちも口々にブーイングするが、残念ながらもっともである。


「オーッマイガッ、録画していたんだっけ。相棒とサメ子の前では役名を隠していたのにバレてしまった」


 桃太達が見ている動画の中で、乂は「今のシーンカットできない?」などとのたまっているが、映像録画術に編集機能はなかったらしい。


「うん、ちょっと恥ずかしい。」

「これは間違いなくガイ。偽物の心配はないサメ」

「乂様。おいたわしや」


 桃太達は雰囲気の変化に風邪をひきそうになったが、残念ながら危険は去っていなかった。


「二足歩行の獣が、減らず口をたたきやがって!」


 乂の飄然ひょうぜんとした態度がよほどに気がくわなかったのか、それとも練度が低いのか。


「シンショウ隊長の手を煩わせるまでもない。おれに続け、第二班射撃用意!」

「「死ねええ」」


 〝完全正義帝国〟の兵士、猟犬銃鬼オヴィンニクの班長が上官の命令を待たずして銃撃を放ち、部下四人も続こうとした。


「銃弾はまっすぐ飛ぶからな、剣よりも対処しやすいんだよっ」


 されど、乂が飛来する弾丸を錆びた短剣で反射。

 先走った雑兵五人は、それぞれ自ら放った銃弾で生身の体に風穴を空けられて、痛みのあまり悶絶した。


「「ぎいやあああ!?」

「五馬家秘伝〝葉隠はがくれ〟……じゃなかった。オレ流・ハイド・ザ・リーブズの進化を見せてやるぜ!」


 乂はその隙を見逃さす、短剣に風を巻き付けながら、山道を蹴りつけて走る。


変幻抜刀へんげんばっとう疾風斬しっぷうざん!」

「「風がっ、うわあああっ」」

「「お、おでのうでがああっ。足があっっ」」


 乂は一陣の風となって剣を振るって追撃。あたかもボウリング球がピンを吹き飛ばすように、〝鬼の力〟を宿す機械仕掛けの手足を破壊して、五人のサイボーグ兵を無力化した。


「乂、やるじゃないか!」

「恐ろしくはやい剣さばきサメエ。紗雨たちじゃないと見逃しちゃうサメエ」

変幻抜刀へんげんばっとう疾風斬しっぷうざん。まさに神業でした」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>映像録画術に編集機能はなかったらしい リン「こんな事に労力さく気はないわ」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ