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第629話 八岐大蛇の首、その始まり

629


「一千年前、鬼に堕ちたドラゴン達は自らの世界の何もかもを食い尽くしたが、やがて満足できなくなって徒党を組み、あまたある他世界へと侵略を開始した。そんな星喰らい達が目をつけた異世界の一つがクマ国だったわけだが……カミムスビとスサノオ達にこっぴどくやられて次元の狭間へ封印された」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、昆布のごとく艶の無い黒髪の少女、伊吹賈南いぶきかなんから異界迷宮カクリヨの歴史を聞いて、浅く息を吐いた。


「八岐大蛇の祖先は、異世界から集まった星喰らいの集団だったのか」

「カナンちゃんには悪いけど、攻め込まれた方にとっては迷惑な話サメエ」


 ここまでは、桃太と彼の隣に立つ、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨が〝遊戯用迷宮U・S・Jウメダのすごいジャングル〟で学んだクマ国創世の歴史と一致していた。


「サアメの言う通り、自業自得ではあるよ。〝隔離された空間(カクリヨ)〟に閉じ込められた我らの祖先、ドラゴンは、過酷な環境にも適応できるよう、〝赤い霧と黒い霜〟へと姿を変えた。そうして、閉鎖空間の中に異界迷宮カクリヨという新世界を創造し、八つの派閥に別れて統治を始め、当主の座は襲名制となった」

「それって、まるで日本の冒険者ギルドと八大勇者パーティじゃないか」


 桃太は奇しくも自身の辿ってきた軌跡と似通っていたため、胸にずんとした重みを感じた。


「ふん。王朝、首長、取締役。呼び名は変われども、どこの世界でも権力闘争とは似たようなものよ。そして血筋や縁故によって頭首が引き継がれれば、必ずや反発するものが生まれる」

「それは、そうだね……」

「サメエ」


 桃太と紗雨はがくりと肩を落とす。

 一つの血筋や勢力が力を持ち続けるのは不自然で、栄枯盛衰えいこせいすいは自然なことだろうが、その流れは穏やかであって欲しいものだ。

 

七罪業夢ななつみぎょうむが糸を引いたにせよ、地球日本で三縞凛音みしまりんねが妾を追い落とし、六辻剛浚ろくつじごうしゅん六辻詠ろくつじうたを幽閉したように……。カクリヨでは、八岐大蛇の首が隙を見せるや、即座に下の者が反逆し、新たな首としてとってかわる。そんな下剋上げのくじょうの戦いが延々と繰り返された」


 賈南は、今まで謎だった八岐大蛇と異界迷宮カクリヨの政治形態と歴史を赤裸々に語った。

 ある候補者は政敵を毒殺した後に、衆人環視の元で刺殺され……。

 またある候補者は、敵対するグループを皆殺しにした直後、身内の裏切りにあって一族もろとも火葬される……。

 血で血を洗う戦いが延々と続いたのだという。


「妾達ドラゴンの祖先は、元々生まれた世界を食い尽くすほどの強欲者の集まりだから、少しでも他人の風下に立つのが許せなかったのだろう。

 そして、先も述べたように、妾達には、〝融合術〟という、他者を自分そのものに変える力があった。

 これは子孫へ力を渡す時にも影響してな。父祖の記憶が力と共に引き継がれるのだ。

 憎しみは薪となってマグマのように燃え盛り、恨みは重なって海のように広がる。勝者と敗者がぐるぐると入れ替わる終わりのない争いは、そりゃもう過激だったよ」

「そんなの、まるで地獄サメエ」


 紗雨は、これまで八大勇者パーティとの戦いを体験していたため争いの様子が目に浮かぶようで、別世界のこととはいえど胸を痛めてうつむいた。


「そうだ。サアメの言う通り、古の異界迷宮カクリヨは地獄もいいところよ。弱肉強食といえば聞こえはいいが、内紛を続けていては、軍勢も弱まるばかりだ」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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