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第622話 一方的な決戦

622


「こ、この妾の目をもってしても読めなかった。八岐大蛇の首である妾達よりも戦闘意欲が高いとか、どんだけ蛮族なのーっ」


 八岐大蛇の首、その化身たる少女、伊吹いぶき賈南かなんは、二千年を生きる付喪神、田楽おでんを盛大に煽ったにもかかわらず、いざ攻撃を受けるや否や、恥も外聞もなく尻に帆をかけて逃げ出した。


「カカカ。まーてーっ」

「ギャー、実力行使反対。なーんてな!」


 賈南は隠し部屋から、戦闘艦トツカを停泊させるためのデッキへと飛び降りつつ、いつの間にか仕込んだらしい爆弾を起動させる。


「アハハ、口喧嘩に拳を出す方が悪い。妾が異世界クマ国でも通用するよう工夫をこらした逸品、その威力に目を見張るがいい」


 が、肝心のおでんは、逃げ場のない入り口で容赦のない爆発に巻き込まれたにもかかわらず――。


「カカカっ。で、この湿気った線香花火に意味があるのか?」


 ――まるで効いた様子がなかった。


「おまっ、人形に憑依しないと全力出せないんじゃないのかあっ」

「全力が出せなくとも戦えるわい。さあ勝負しようやあ!」

「いやーっ」


 かくして、不毛な追いかけっこが始まった。

 

「ひいいい、お助けええ」

「オイテケ、オイテケ、命を置いてけ!」

「これはもう怪談じゃないか。遊戯用地下迷宮〝U・S・Jウメダのすごいジャングル〟は、いつから江戸本所のお堀になったんだああ」


 賈南は自身の攻撃的な態度があくまで譲歩を引き出すためのブラフ、攪乱の為だったのに対し、おでんの方は自分を生かして捕まえる気はないと判断。深海水族館を彩る標本や資料といった展示物の下をかいくぐって必死に逃げる。


「そ、そ、そうだ、田楽おでん。妾を殺したら、〝U・S・J〟が事故物件になってしまうぞ!」

「ここに八岐大蛇の首など、最初からいなかった。イイネ?」

「いいわけあるかあ!」


 賈南は、これまで地下三〇階のダンジョンをくだってきたこともあり、遂にスタミナが切れてしまい、這うように倒れた。

 おでんは金色の瞳を輝かせながら、ニタニタと笑い、賈南にトドメを刺さんと追いかけてくる。


「いやだあ、死にたくないっ、逝きたくなああい! ゲホッゴホッ」

「因果応報、年貢の納め時じゃああ」


 賈南は自分にとどめをさすべく迫る、おでんの姿があまりに楽しそうだったから、「ひょっとして話が通じるのではないか?」という妄想がよぎった。

 過酷な逃走がもたらす酸欠と疲労で、もはや正常な判断ができなくなっていたのだろう。


「田楽おでん。も、もう、こんな追いかけっこはやめにしよう」


 賈南は這々の体で立ち上がると、おでんを受け入れるように手を広げた。


「伊吹童子?」


 後を追うおでんは、不思議そうに首をかしげて速度を緩めた。


「姉バアサン、我々の間には深刻な誤解がある。ここは一つ、孫のように可愛い妾と腹を割って話そうではないか!」


 賈南は荒い呼吸で肩を揺らしながらおでんに歩み寄り、おでんもまた足を止めて優しげに賈南の腰へ手を回して抱擁する。


「誰が姉バアサンで、誰が孫かっ。がい君直伝、アルゼンチンバックブリーガーっ。しねえ!」

「ですよねえええっ。ぐはあ!!」


――――――――――

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>姉バアサン ……ここにも2番さんの系譜が!?
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