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第616話 ウメダの里、エキシビジョンマッチ決着!

616


「紗雨ちゃん、みずちさんの方は俺がなんとかする。だから、おでんさんに一発かましてくるんだ」

「お任せサメエ!」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたと、彼のパートナーである、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめは、二千年もの長きにわたり異世界クマ国を守ってきた歴戦の付喪神つくもがみ……。田楽おでんと佐倉みずちのチームを相手取るエキシビジョンマッチに決着をつけるべく走り出した。


「――〝憑依解除ビーエンデンド〟。

 なあ、ガンバンテイン。どれほど年を重ねても、敗北の味は苦いものじゃな」


 おでんは鴉の濡れ羽が如き美しい黒髪を海風になびかせながら、被っていた隻眼の翁の面を外した。

 彼女が合体変身をといたことで、スレンダーな身体を覆う服が、黒いドレスローブから赤いサマースーツへと戻る。


「おでん。ガンバンテインじゃなくて、みずちと呼んで」


 おでんが抱えていた竪琴。

 佐倉みずちもまた、水色の短髪の上にセーラー帽をかぶり、水兵服を着た少女の姿を取り戻して、豊かな胸を揺らしながら深呼吸している。


「あとで飲むなら付き合うわよ。そうだ、〝酒虫水瓶しゅちゅうすいびん〟にも声をかけましょう。また彼の醸すお酒を飲んでみたかったのよ」

「みずちよ。ホストがゲストに酒をたかるのは感心せんぞ。でも、サケトケノカミが熱心に教えただけあって、酒虫水瓶のつくる酒は美味いものなあ……」


 二人は同じように桃太と紗雨を見つめたが、対応はそれぞれ正反対だった。


「降参。桃太君達の勝ちよ」


 桃太が駆け寄ると、みずちはセーラー帽を脱ぎ、豊かな胸元を飾るボタンにひっかけて両手をあげた。


「対戦ありがとうございました。勉強になりました!」

「こちらこそ、良い戦いだったわ」


 桃太とみずちは共に頭を下げて軽い抱擁を交わし、互いの健闘を讃えたのに対し……。


「サメエ? おでんオネーチャンはまだやる気なんだサメエ!?」

「カカカっ。ケジメはつけんとな」


 紗雨が近づいてなお、おでんは戦闘体勢を解くことはなく、軽やかに回し蹴りを浴びせる。


「おでんオネーチャンの意地悪ううう!」


 紗雨は姉と慕った女性の反応に半泣きになりながらも、左手で蹴りを受け止め、右手でおでんを平手打ちにする。

 戦場となった無人島全域に響き渡るような、パァンという高い音が響いた。


「投了じゃ。紗雨ちゃん、そして桃太君。よくわしとみずちを倒してみせた。我が戦友、火龍アテルイが残した未来への希望、戦闘艦トツカをよろしく頼む。これが船のメインキーじゃ」


 おでんはそう言って、空間干渉の術がかかっているらしいサマースーツのポケットから、二〇センチはあるだろう鍵を取り出して手渡したものの……。

 念願の賞品を受け取った紗雨と、その後ろから見守る桃太の顔は真っ青だった。


「おでん、さん、か、鍵よりもかお、かおが」

「ど、どど、どうなっているんだサメエエ!?」

「どうした? って、おお、視界が正反対じゃ」


 そう、紗雨の平手うちを受けたことで、おでんの頭は胸ではなく背中側、正反対の方向を向いていたからだ。


「紗雨ちゃん、いくらなんでも首を折るのはやり過ぎだよっ」

「ちがっ、なんでええっ」

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