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第615話 〝生太刀・草薙、砲車雲〟対〝死と再生の夜祭り〟

615


「うおおおっ、いっけえええっ!」

「桃太おにーさんと紗雨のど根性を見るサメエエ」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたと、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめが振るう必殺技、〝生太刀いくたち草薙くさなぎ砲車雲もとくも〟は、天を貫く塔の如き嵐の剣となって、戦場となった無人島を囲むモノクロの世界を断ち割ろうとしていた。


「クマ国と地球、異界迷宮カクリヨの三世界結合の結合が、まさかこれほどの力を生み出そうとは……」


 鴉の濡れ羽が如き黒髪が美しい、二千年を生きる付喪神つくもがみ、田楽おでんは、自らの奥義であり、運命を支配する世界そのものである〝死と再生の夜祭り(ヴァルプルギスナハト)〟にひびを入れられて、激情のあまり漆黒のドレスに包まれた華奢な肉体を震わせる。


「我が残るすべての力で命ずる。

 ひとつ、〝北欧神〟以外の攻撃行動を禁ずる!

 ふたつ、〝北欧神〟以外の防御行動を禁ずる!

 みっつ、〝北欧神〟以外の移動行動を禁ずる!」


 おでんは再び命令で桃太と紗雨を縛ろうとするが……。


「因果操作がどうしたっ。世界が邪魔をするのなら、その理ごとぶっとばす!」

「何度でも言うサメ。サメは世界で一番自由、止めることなんで出来ないんだサメエ!」


 桃太と紗雨は世界を断つ剣によって、文字の形で飛来する命令そのものを引き裂いた。


「懐かしいのう、あのバカ息子を育てていた頃を思い出す。聞かん坊め、オモチャはどれほど必要なんじゃ?

 よっつ、〝北欧神〟は天より箒星ほうきぼしを招く!」

「おでん、それはっ」


 おでんはみずちの制止を振り切り、空から無人島へ流星を落として阻もうとするも……。


「どんとこい」

「流星よりも、可愛いサメが欲しいんだサメエエ」


 桃太と紗雨は重ねた手で螺旋を描く嵐の剣で、天より落ちる招かれざる箒星をもバラバラに砕いて飲み干した。


「星落としを防ぐじゃとっ。カムロが三世界分離を決断したわけだ。異なる世界の交わりは、ひょっとしたら八岐大蛇以上の脅威となるやもしれん。ならば、わしがここで止めねばっ」

「おでん、落ち着きなさい。本末転倒もはなはだしい!」


 おでんは焦燥に駆られるも、彼女が抱える竪琴となった相棒、同じ付喪神である佐倉みずちが荒々しい声でいさめた。

 

「おでん。貴女は二千年前に世界を救おうとして失敗し、一千年前に育てた養子とも喧嘩別れしてしまった。だから、変化を恐れる気持ちはわかる。でもね、だからと言って怯えすぎよ」

「みずち。わしが変化を恐れているじゃと?」


 みずちの言葉におでんはカッとして、情緒不安定になっている自分自身に気がついた。


「桃太君は、八岐大蛇を調伏できる存在になろうとカムロを師を選び、カムロもまた桃太君を弟子に選び、自らの技である〝生太刀いくたち草薙くさなぎ〟を委ねた。彼と紗雨ちゃんこそ、亡きアテルイが願った未来の可能性そのものよ。それを摘むのは本意ではないでしょう?」

「……そうじゃな。つい熱くなってしもうた。わしはただ置いて行かれるのが怖かっただけ。負け、じゃの」


 桃太達が伸ばす嵐の剣はついに閉ざされた結界の頂点、中心部分を突き破り、世界が白黒のモノクロカラーから、元の鮮やかな色彩を取り戻す。


「紗雨ちゃん、みずちさんの方は俺がなんとかする。だから、おでんさんに一発かましてくるんだ」

「お任せサメエ!」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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おでん「パワーをメテオに」
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