第613話 運命支配結界・ヴァルプルギスナハトを打ちやぶれ
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「さあ、反撃だっ。我流・螺子回転刃」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、彼の側に立つ、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨の力を借りて、周囲一帯に展開された、溢れんばかりの文字の武器を破壊する……ミキサー状の衝撃波を生み出した。
「この技、カムロの必殺技を模倣したかっ? バカなことはやめい、生半可な腕で再現を試みれば、反動で大怪我をするぞ」
鴉の濡れ羽が如き黒髪が美しい、漆黒のドレスを身につけた付喪神、田楽おでんが諫めるものの……。
「ああ、確かに俺がやろうとしている技は危険だ。威力と射程範囲が数倍に跳ね上がる代わり、溜め時間が必要になるし、暴走させるから敵味方の識別もできなくなる。オウモさんから貰い、地上に預けた手袋、日緋色孔雀の助けがなければ使いこなせない。でも、俺は一人じゃない」
「足りない部分は紗雨が補うサメエ。どーんどんぶっ壊しちゃうサメエ。セット破壊は、パニック映画の醍醐味なんだサメエ」
桃太と紗雨は動じることなく、おでんの支配する空間を埋め尽くす武器を破壊し、その力を渦状のエネルギーにかえて取り込んでゆく。
︎ 「まさか、桃太君と紗雨ちゃんは〝鬼の力〟に直接干渉しているのか? スサノオだって、そんな技は使えなかったぞっ」
「おでん、落ち着きなさい。貴方が知っているのは、スサノオが一千年前、〝草刈り用〟に使っていた技でしょう。そのままなはずがないじゃない」
おでんの惑いに対し、彼女が持つ竪琴となった付喪神、佐倉みずちがツッコミを入れる。
「スサノオから記憶を受け継いだカムロは、クマ国を八岐大蛇から取り戻すために、様々な改良を加え〝生太刀・草薙〟を完成させたのでしょう。そして、弟子である桃太君と養女である紗雨ちゃんは、更に先へ行くのね」
桃太はみずちの述懐に応えた。
「ああ、そうだ。おでんさんとみずちさんはそもそも標的じゃないから、敵味方識別能力は不要。俺達はただこの世界を断ち切るのみ」
「我流・螺子回転刃で集めたエネルギーを使って、〝おでんオネーチャンが掌握した世界〟を粉砕するんだサメエ」
桃太と紗雨は空へと向かって、繋いだ左右の手をかかげた。
「おでんさん、みずちさん。貴方達が背負ってきた過去は辛く苦しいものだろうっ」
「でも、その上で、桃太おにーさんと紗雨の生き方は二人で決めるサメエ!」
桃太と紗雨は、おでんとみずちが創りあげたモノクロの世界を切り裂かんと、暴風を具現化した剣をふりあげる。
「これが俺と紗雨ちゃんの切り札、〝生太刀・草薙、砲車雲〟だあ!」
あとがき
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