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第607話 コントロール勝負

607


(もしかしてと思ったけれど、やはり合体変身は、合体する二人のメンタルに左右されるのか? あんなに強力で精緻せいちだったおでんさんとみずちさんの術がいきなり杜撰ずさんになった気がする)


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、相手チームの心を揺るがすことで攻防を弱体化させ……。

 右手にまとったドリルで、無人島をえぐるほどに巨大な水槍を弾き飛ばし、頑丈な極まりない水壁の囲いを突破することに成功した。


「あーもうっ、桃太君が変なことを言うからじゃ。あのヤンチャなクソガキが、家族思いだったとか、ありえんじゃろう。鳥肌がたつわ!」


 一方、鴉の濡れ羽がごとき黒髪が美しい黒衣の麗女、田楽おでんは、二度も勝機をふいにしたことを自覚したか、養い子であった氷神アマツミカボシを罵りながら距離をとり、滝の如き巨大な水槍で牽制してきた。


「あら、わたしも桃太君の意見に賛成よ。あの子、家族への思い入れは人一倍強かったもの。育ての親の貴方に似て、不器用さが天元突破していただけよ」

「て、手のかかる息子さんだサメエ。ひょっとしておでんオネーチャンに甘えていたんだサメエ」

「いやじゃいやじゃ聞きとうない!」


 おでんの心を揺らしつつも、親子の誤解を解きたいという、桃太の意図に賛同したのだろう。

 おでんが抱える竪琴となった佐倉みずちと、桃太がかぶるサメの仮面となった少女、建速紗雨たけはやさあめも、説得に加わるが……

 おでんは耳をふさぎ、水槍を振り回すばかりか、足から機関砲のように文字の弾丸をばらまき、戦場となった礒辺に蜂の巣状の大穴を空けた。

 しかし、威力こそ絶大ながら、桃太にはかすりもしない。


(やっぱり、合体変身には心を通わせることが大事なんだな。一心同体となった二人の意見や心情が割れると、途端にコントロールが悪くなる)


 桃太自身、相棒である五馬乂いつまがいと初めて変身し、矢上遥花やがみはるかが変貌した鬼、ヤクシニーと対峙した時……。

 意見が一致していた時こそ強かったが、意見が分かれた途端に精彩を欠いたことを思い出す。


(自分たちだけじゃ、ここまで正確にはわからなかった。本当に貴重な戦いだ)


 桃太は、おでんとみずちとの戦いから、自分たちの切り札である合体変身がなんたるものかを学びとっていた。


(それに、亡くなった家族を誤解したままなののは嫌だものな)


 桃太は回避しつつ、遥か遠い昔の先達にあたる冒険者に黙祷を捧げる。


「おでんさんの頑固者っ。攻略法がわかった以上、ここまで近づけば十分だ。紗雨ちゃん、おでんさんに仕掛けるよ」

「わかった。おでんオネーチャンには、頭を冷やしてもらうサメエ!」


 桃太の黒い瞳が、〝巫の力〟を発動してひときわ青く輝き、腕に結んだ紗雨の勾玉も銀色の光を発する。

 二人は力を合わせ、勾玉から白銀に輝く巨大な水の竜巻を生み出した。


「そんなもので、わしらの術がやぶれるものか。その程度の水術、わしの火球で蒸発させてやろう!」

「いいや、今の貴方達ならばやぶれる」


 桃太は断言し、おでんが放つ砂をガラス化させるほど高温の火球を水の竜巻で飲み干した。


「なんでじゃっ!?」

「おでん、油断しないで。桃太君と紗雨ちゃんの呼吸は一致しているのに、わたしと貴女はさっきから連携がガタガタよ。彼らのコントロールが、わたし達を上回ってるいるの!」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
おそらく桃太君が他人と波長を合わせやすい性格なんだろうね、こうも見事に呼吸を合わせて合体技ができるのは。 結構あっさりやってるイメージがあるけど、実際はかなり難しいと見た。 それに、サメちゃんとの物…
2番さんは家族や仲間と認めた相手には思い入れが強いですよね ただ、行動やその結果は……(遠い目)
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