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第606話 合体変身の弱点!?

606


︎ 「紗雨さあめちゃん、突破口が見えた。まず囮となる分身をお願い。撹乱しながら隙を狙う」

「わかったサメエ。がんがん作っちゃうサメエっ」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、彼のかぶるサメの仮面となった少女、建速紗雨たけはやさあめの力を借りて、波打ち際の海水から、三〇体もの自身に似せた囮を形成。


「これでどうだあっ。ドリルタイフーン!」


 桃太と三〇体の分身は、同じように合体変身で一体化した田楽おでんと佐倉みずちを包囲して、右腕に巻きつけたドリルをかかげながら突撃した。


「それがどうした。まとめて潰す。特大の槍を受けよ!」


 しかしながら、おでんは竪琴となったみずちに水をまとわせて、電信柱を数本束ねるほどに巨大な槍をつくりあげるや、円を描くように自身に切り込んできた分身三〇体をひとなぎで破壊してしまう。


「なんて力技」

「ほげええサメエっ」


 桃太と紗雨は辛くも避けたものの、あまりの破壊力に圧倒されて悲鳴をあげる。


「カカカっ、パワーじゃ。力攻めこそ一番の解決法よ!」

「落ち着きなさいっ。おでんのそういうところが、息子さんをイノシシにしたのよ!」


 気をよくしたおでんは、みずちの制止も聞かず、巨大な槍をぶん回す。

 桃太と紗雨がつくった囮だけにとどまらず、巻き込まれた岩は粘土細工のように崩れ、森の木々も枯れ枝のごとくポキポキと折れ砕けた。


(やりすぎだ。いくら無人島でも被害が大きすぎるだろう……。でも、それだけじゃない。俺の推測が正しければ、きっとおでんさんとみずちさんの心が一致せずに、コントロールが大味になっているんだ)


 桃太は、自らが見出した合体変身の弱点を検証しつつ、ドリルを使って砂浜にもぐり回避した。

 同時に、みずちの言うとおり、おでんが喧嘩別れしたという養子、氷神アマツミカボシと実は似ているのではないかと思い至る。


(アマツミカボシさん、クマ国の民衆が創世神カミムスビさんを起こそうとニワトリを集めた時も、もう少し寝かせてあげようと思って邪魔をしたんじゃないかなあ。といっても、ヤキトリにするのは論外だけど!)


 氷神アマツミカボシは、育ての親のおでんに似て、やることなすこと派手で地雷を踏みまくるだけで、本人に悪意はないのだろう。

 だからこそ、武神スサノオ達も彼を仲間として認めていたのではないか? 


「おでんさん。アマツミカボシさんが、おでんさんを隠居させようとしたのは、危険から遠ざけようとする気づかいだったのでは?」


 桃太は再び地上に飛び出すや、這うような低姿勢で巨大な槍を回避しつつ、おでんの心を揺らそうと、新たな疑問を投げかけた。


「カカっ。あいつに家族愛などあるものか。くだらんことを抜かすと蹴っ飛ばすぞ」


 激昂したおでんは、巨大な水槍を嵐のごとき勢いで叩きつけ、今度こそ桃太に直撃するが……。


「うわっ、あぶなっ!?」

「サメエ? なんか弱くなったサメエ?」


 桃太は右手にまとったドリルで受け止め、そればかりか弾きとばしたではないか?


「なんじゃとっ。みずち、手を抜いているのではないか?」

「違う。おでんが焦っているのよ。水の囲いよ!」


 みずちはおでんの疑問に対して叱咤で答え、桃太達を水の壁で囲う。しかし、これも以前ほどの防御力はなく、あっさりとドリルで引きちぎり、脱出することができた。


(もしかしてと思ったけれど、やはり合体変身は、合体する二人のメンタルに左右されるのか? あんなに強力で精緻せいちだったおでんさんとみずちさんの術がいきなり杜撰ずさんになった気がする)

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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>氷神アマツミカボシは、育ての親のおでんに似て、やることなすこと派手で地雷を踏みまくるだけで、本人に悪意はないのだろう 弟妹達「「だからより一層タチが悪いんだ!」」
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