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第605話 桃太、合体変身の攻略法を見抜く?

605


「わしとみずちは、桃太君と紗雨ちゃんの使う合体変身が作られた時代に生きていたのじゃ。同じ技を使えてもおかしくはあるまい?」


 鴉の濡れ羽がごとき黒髪が美しい麗女、田楽おでんは、漆黒のドレスに包まれた薄い胸を張って言い放ち、自信満々で竪琴をかきならしながら、額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたへ向けて水刃を噴射するも……。


「あら、おかしいに決まってるじゃない」


 ウォーターカッターを射出する相方、竪琴ガンバンテインに変身した佐倉みずちから、即座に修正を受けた。


「桃太君、紗雨ちゃん、聞いてよ。おでんは、〝合体変身〟っていう新しい技術も完成したし、時代遅れのアネバーサンは戦わずに囲炉裏いろりにでもあたっていろ〟って、育ての息子さん、氷神アマツミカボシに煽られたから、技を必死で覚えたのよ」

「「アマツミカボシさん、口が悪っ」」


 桃太と彼がかぶるサメの仮面となった少女、建速紗雨たけはやさあめは正直な感想を口にしつつ、右手にまきつけた水のドリルで砂浜を掘り起こし、ウォーターカッターをギリギリで回避する。


「今でも覚えているわ。時代に取り残されるのがいやだって、何度もドアを叩かれて、わたし、練習に何日も付き合わされたのよ。おでんと心を重ねるのに、すっごく苦労したんだからっ!」

「だーかーらー、そういうことは忘れていい。なあにが『アネバーサンは大人しく隠居していろ』じゃ。あんなやつ息子でも何でもない!」


 おでんは水刃で牽制しつつ、ルーン文字を変化させた火球を、桃太達が隠れた砂浜に向けて連続で放つ。

 一発一発はリンゴ大とそう大きくないが、弾幕をはられたがゆえに回避は困難。おまけに触れた砂が溶けてガラス化するほどに高熱だ。


「桃太おにーさん、あんなの受けたら一貫の終わりサメエ」

「砂で壁をつくる。紗雨ちゃんは水で固めて」

「わかったサメエ」

「お、出てきたの。おねえちゃんビーム!」


 桃太達は身を守るために水と砂を使い、何十枚もの盾をつくりあげたものの、おでんの放つ火球やピンク色のビームを受けて、パリンパリンとせんべいのように割れてしまった。


「まずいな。負けてはいないが」

「このままじゃジリ貧になっちゃうサメエ」


 桃太と紗雨が担う役名〝行者ぎょうじゃ〟は水を自在に操り、白兵戦から射撃戦までこなす得意距離の広さがあるが……。

 ワイワイガヤガヤと内輪揉めをしながら、ルーン文字を媒介に世界を書き換えるおでんとみずち達の役名〝北欧神オーディン〟は、ほぼほぼ上位互換だ。


(氷神アマツミカボシさんは、このクソ強い人に隠居しろだなんて、いったい何を考えていたんだ……? ああ、そっか。愛情表現がヘタクソなだけだったんじゃないかなあ)


 桃太はこれまで知った異世界クマ国の神話から、相対するおでんが勘当したという息子、氷神アマツミカボシの本質を把握し始めていた。


(さっき、みずちさんはおでんと心を重ねるのに苦労したと言っていた。これって攻略の切り口になるんじゃないか)


 桃太はへその下に力をこめて、左目上にかぶる仮面となった紗雨に呼びかけた。


「紗雨ちゃん、突破口が見えた。まず囮となる分身をお願い。撹乱かくらんしながら隙を狙う」

「わかったサメエ。がんがん作っちゃうサメエっ」

あとがき

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>みずちさんはおでんと心を重ねるのに苦労した 成程、つまりみずちとおでんが心を重ねられなくすると 桃太「おでんさん、クマ国の伝統に倣った手料理食べてください!」 みずち「おでん、感覚共有するの嫌だから…
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