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第602話 コンビネーションアタック

602


「おでんさん。隙というなら貴女もだ。師匠、カムロさんとの戦いを見て、そして実際に戦ってわかった。貴方は格闘も鬼術もデタラメに強いが、文字を媒介にする以上、発動までに僅かな空白が生まれる。おそらくは古い世界の戦闘手段を無茶してクマ国世界にコンバートしているからだ。そこに、俺たちの勝機がある!」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、鴉の濡れ羽がごとき黒髪が美しい、隻眼せきがんおきなの面をかぶった麗女、田楽おでんに対し、自身を奮い立たせるように啖呵たんかを切った。


「桃太君、わしはお姉ちゃん、じゃ。世界の変革によって生じた空白については、否定はせんよ。ゆえに、ルーン文字は予め刻んでおくのが定石じゃが、先の栄彦はるひこ君や陸羽りうちゃんとの交戦で、ストックを使いきってしもうた」

「ええ、これはチーム戦です。俺と紗雨ちゃんだけでは、おでんさんとみずちさんには勝てない。けれど、今ならばチャンスがある」


 桃太は足裏から砂浜に衝撃波を叩きつけて再加速し、あたかも雷のごとくジグザグに方向転換を繰り返しながら加速……。


「「うおおお、どうやっているのかわからないが、出雲の動きがメチャクチャはええっ」」

「「あんな戦い方はカムロ様でも見たことがない」」


 ウメダの里で中継映像を見る、冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟の仲間や、里人達の快哉を浴びながら、おでんの放つ文字の弾丸を避けて、一気に間合いを詰めた。


「これが俺と紗雨ちゃんのコンビネーション技だ。もう一度、我流・水刀すいとう!」

「ベストパートナーなんだサメエ!」


 桃太は、彼がかぶるサメのお面となった銀髪碧眼の少女、建速紗雨の力を借りて水の手裏剣を投げつつ、砂浜を巻き上げるほどの衝撃波をまとった蹴りを幾度となく繰り返した。


「カムロのジジイが鍛え、我が迷宮で磨いただけあって、速く鋭い技よ。しかし、どれだけ強力な攻撃も芯を当てねば意味がない。そして、その技は間合いが短いっ」


 おでんは、砂の煙幕にまぎれて放つ新技の水刀を警戒したのか、文字で作った半円型の盾で防御に集中していたものの、一転して反撃に転じた。

 本来であれば楽器であるはずの、佐倉みずちが姿を変えた竪琴を鈍器がわりにして殴りかかり、リーチの差もあって、徒手空拳の桃太を圧倒する。


「戦いが面白いのは手札が無くなってからよ。桃太君と紗雨ちゃんはどうかな!」

「なっ!?」

「サメエエっ!?」


 おでんが竪琴を一振りするや、空気に亀裂がはしり、膨大な量の風の刃、かまいたちを生み出して、桃太が盾に使おうと作り上げた衝撃刃を煎餅せんべいのように割りくだいた。


「か、火力が違うのか」

「〝融合〟……合体変身の影響もあるのだけど、おでんは、地球でかつて栄えた恐竜のように、攻撃力が過大化した時代を二度も体験しているからね」

「みずち、人を年寄りのようにいうでない。器を新しいものに変えているだけで、其方もわしと大して歳の差はないじゃろうが!」

 

 おでんがみずちと口論しながら、攻撃技を繰り出す度に……。

 戦場となった無人島では、技の余波で海が荒れて、嵐のような暴風がふき、雷鳴のごとき轟音が鳴り響く。


「「さすがの出雲でも厳しいだろう」」

「「こ、これは紗雨姫でも苦しいか」」


 それは、まるで神々の戦いのようで、ウメダの里で見守る観戦者たちを陣営問わずに戦慄させた。


「すみません。おでんお姉さんって、わりと煽りに弱いというか、生真面目ですよね」

「一撃離脱に見せかけたのはブラフ。おでんオネーチャンは罠にかかったんだサメエ!」


 しかし、実のところ、ここまでは桃太達の思い通りの展開だ。彼がかぶるサメのお面となった紗雨が、ニッコリ笑って高らかに声をあげる。


「さっきまで何度も繰り出したキック、なんで派手に砂を巻き上げたと思うサメエ。その時に仕込んだ、水手裏剣乱舞をくらうサメエ」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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