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第598話 おでんの役名宣言

598


 西暦二〇X二年八月三一日昼。

 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、師匠である異世界クマ国代表カムロに挑むための武器として、古代の火竜アテルイが残した戦闘艦トツカを手に入れるため……。

 サメに似た仮面となった少女、建速紗雨たけはやさあめと一体化し、水色の髪にセーラー帽をかぶり水兵服を着た少女、佐倉みずちを相手に一進一退の攻防を繰り広げていた。


「桃太君、紗雨ちゃん。とっても楽しいわ。この時間が永遠に続けばいいのに」


 桃太が右腕にまとわせた水のドリルに対し、みずちは同様に水を集めた薙刀で打ち合いながら、寂しそうに口元を歪めた。


「みずちさん、何か心配でもあるんですか?」

「え、時間制限みたいなルールはなかったサメエ?」


 桃太と紗雨が不思議そうに首を傾げるも……。


「実は、わたしの友人、田楽おでんは凄く負けず嫌いで短気なのよ。養子として引き取った氷神アマツミカボシとそっくり。あの親子の仲がこじれたのは、きっと同族嫌悪ね」


 いぶかしむ二人に対して、みずちは意外な返答を返した。


「「ええーっ。まっさかあ(サメエ)」」


 桃太と紗雨は信じなかったものの、彼女はこの時すでに、後の展開を予想していたのかもしれない。


「うちも切り札を使いますっ! 〝停止の視線光アイ・オブ・ゴルゴーン〟」


 山吹色の髪を三つ編みに結い、白い蒸気鎧パワードスーツを身につけた少女、呉陸羽くれりうが放つ〝蛇髪鬼へびかみのおにゴルゴーン〟の力を模した強制停止技と……。


「呉家秘伝、奥義〝水意八閃すいいはっせん〟!」


 陸羽の叔父であるベテラン冒険者の呉栄彦くれはるひこが、赤い山椒魚に似た虫が描かれた金属水筒スキットル付喪神つくもがみ、〝鬼神具きしんぐ酒虫水瓶しゅちゅうすいびん〟の力を借りて繰り出した八連続必殺技が直撃。


「認めよう、呉陸羽くれりう呉栄彦くれはるひこ。お前達は強い。新たな時代の風を感じるよ。ゆえにみずち、いや、ガンバンテインよ。古き時代のなごりたるわしらも、本気を出そうではないか!」


 異世界クマ国で一千年を生きる付喪神。

 鴉の濡れ羽が如き黒髪が美しい、赤いサマースーツを着た麗女、田楽おでんは衣服に仕込んでいた防御術と戦闘中に仕込んだ武器を喪失した。

 結果、本気になったのだろう。おでんの黒かった瞳が、突如として〝鬼の力〟を意味する赤い光を帯びる。


「わたし、今、桃太君や紗雨ちゃんと楽しく戦っているんだよ。お姉ちゃんぶるくせに、すぐ噴火中の火山みたいに熱くなるんだから」


 桃太、紗雨のコンビと交戦中だったみずちは、相棒のわがままを聞いて不服そうに舌を打ったが、おでんはマイペースを崩さない。


「長い付き合いじゃろ、許せ」

「親しい相手だとゴリ押しするところ、貴方が勘当した息子さんと、そっくりよ。水の囲いよ!」


 みずちが指を鳴らすと天から瀑布ばくふのように水が流れおちて、桃太と彼がかぶる紗雨の四方に、動きを制限した。

 その直後、おでんがこれまでは名乗らなかった役名を高らかに告げる。


舞台降臨ぶたいこうりん 役名布告やくめいふこく――〝北欧神ほくおうしんオーディン〟っ。推して参る!」

あとがき

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