第595話 新技術とその使い手
まえがき
新年あけましておめでとうございます! 本年もよろしくお願いします^^
595
「なるほど、カムロが危惧するように異なる国、異なる世界が交わるからこそ起きる問題もあるが……。オウモが惚れ込んだように、だからこそ生まれる新しい技術もあるということか!?」
山吹色の髪を三つ編みに結い、白い蒸気鎧を身につけた少女、呉陸羽は、鴉の濡れ羽が如き黒髪が美しい、赤いサマースーツを着た麗女、田楽おでんの大岩をも断ち割る手刀を、二つの世界の技術交流が生み出した装甲で見事に受け止めてみせた。
「「おおーっ、さすが新型!? 〝S・E・I 〟の〝鋼騎士〟が着ていたナマクラ鎧とはひと味もふた味も違うぜ」」
日本国で電気異常を引き起こし多くの死者を出したテロリスト団体、〝S・E・I 〟を、額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と共に討った学友達が、拳を突き上げながら喝采する。
地球産の〝蒸気鎧〟を着た悪党達と実際に戦い、倒してきた彼らだからこそ、新型装甲の強さが実感できるのだ。
「「おでん様の手刀が受け止められるなんて、異世界地球の技術ってすごい!?」」
そして、おでんの強さを知るからこそ、彼女が守護するウメダの里人達はどよめきの声をあげた。
「おでんお姉さん。地球と異世界クマ国……法則も文化も歴史も違い、現在進行形で問題が起きていることは知っています。でも、うちは桃太お兄様が願うように、黒騎士が選んだように、二つの世界が手を取り合って、より素敵なものを生み出せると信じています」
冒険者パーティ〝W・A〟のもっとも年若い団員たる少女、陸羽は、足裏から放出される〝鬼の力〟と、翼のように広がるオルガンパイプめいた排気口から噴出する熱気を用いて加速。戦場となった無人島の磯辺を、ホバー走行で軽やかに移動する。
「うちは〝鬼神具・天馬の沓〟で、おじさまと一緒に、桃太お兄様の夢を叶えてみせる」
「リウ、援護するぞ!」
叔父の呉栄彦が金属水筒から放つ、水弾の援護を受けつつ、
馬の沓に似たU字状の刃でおでんの手刀と切り結んだ。
「カカカ。二千年を生きる付喪神である、わしが認めよう。その武器と鎧はたいしたものじゃっ」
おでんは、赤いサマースーツからのびる白い足を閃かせながら、ダイナミックに跳躍。
足先でなにやら文字を刻みつつ、海水にひたされた岩を蹴りながら並走し、手刀だけにとどまらず、裏拳や肘打ちを交えた徒手空拳の連打で、栄彦の水弾を撃墜しつつ、陸羽を翻弄した。
「じゃが、どんな素晴らしい技術で鋳造された名剣、名甲冑であろうとも、持ち主が使いこなせるとは限るまい。栄彦君はともかく、陸羽ちゃんはまだ幼すぎる」
おでんは各個撃破すべく、猛攻で固めた陸羽の懐へと潜り込み、組み技か投げ技をしかけるべく手を伸ばす――。
「確かにおじさまには及びませんが、うちだって冒険者パーティ〝G・O〟が繋いできた〝水意拳〟を使えます。それに蒸気鎧の力を加えればっ!」
この瞬間、陸羽は、鎧の背部に取り付けられたランドセル型の蒸気エンジンを全開で回し、オルガンパイプに似た排気口から煙を吐き出した。
そうして、仙人のごとき摩訶不思議な怪力を誇るおでんの組み付きを、機械仕掛けのパワーで振り払った。
「光球よ!」
更には、突き出した両手のひらから光の玉を生み出して、おでんに向けて発射する。
「カカカ。めくらましとは、シンプルながら上手い戦法じゃ。じゃが、意図が読めては効果半減よ。これでどうじゃっ」
されど、おでんは慌てず騒がず、空中に梵字に似た文字を綴り、黒い大鎌を生み出して迎撃。光球が閃光を放って視界を奪う前に、あっさりと消し飛ばした。
「おでんお姉さんが術を使う瞬間を待っていました。うちも切り札を使いますっ! 〝停止の視線光〟」
「なにっ!?」
あとがき
お読みいただきありがとうございました。
ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)