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第592話 古強者の誇りと若者達の熱意

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「紗雨ちゃん、桃太とうた君。あのカムロを頷かせるのなら、わたしを上回るくらいの力を見せて!」


 水色の短髪の上にセーラー帽をかぶり、水兵服を着た少女、佐倉みずちの悲痛な叫びに対して……。


「師匠の師匠、大師匠おおししょうを超えろとか、ハードルが、ハードルが高いサメエ」

「嫁同士の意地の張り合いで必殺技を編み出すとか、クマ国神話の時代って、どんな魔境だったんだよ!?」


 彼女と交戦中の、額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたと、彼のかぶる鬼面となった少女、建速紗雨たけはやさあめが嘆いたのは言うまでもない。


「みずちさん、紗雨ちゃんと似た必殺技を二つも使える上に、五〇メートル以上射程のある致死攻撃を通常技扱いでぶん回すだなんて強すぎるだろう。どうにか近づかないと、戦いにすらならない」

「桃太おにーさん。紗雨にイイ考えがあるサメ。……って、直撃しちゃうサメエっ!?」

「いや、これは使える!」


 桃太と紗雨が相談を始めた直後、二人はみずちが両手の水球から放ったウォータージェットカッターに貫かれた。

 そうして二人は〝水滴となって〟爆発四散した。


「やりすぎた? いいえ、偽物とすり替わったのね!」


 そう、みずちの推測通り、桃太のアドバイスで、紗雨が水で作り上げた囮と入れ替わり、あえて派手に爆発させて注意をひきつけたのだ。


「そそ、その通りサメエ」

「我流・直刀ちょくとう……をアレンジして、水刀みずかたな!」


 そうしてみずちが囮に集中した隙に、桃太はまっすぐ突進するのをやめて、姿勢を低くしながら背後へ迂回うかい

 ウォーターカッターを真似て圧縮させた水を足に巻きつけた蹴り技で、奇襲をかけた。


「わたしがこうも接近を許すなんて、ブランクのせい、じゃないわね。やはり貴方達は強いっ」

「みずちさん。ベテランだけあって、反応がはやいっ」


 みずちは、ウォータージェットカッターを射出するためのスイカ大の水球をとっさに盾に使い、桃太の足技と相殺させる。

 同種の技が激突した結果、耳をつんざくような爆音が、無人島を揺るがした。

 

「決めきれなかったが、ウォーターカッターの射出台は潰したし、勢いはこちらにある。このまま攻め続けるぞ」

「やっちゃうサメエ」


 桃太と紗雨は、新たな水球を生み出す隙を与えず、両手に巻きつけた水のドリルで突き、払い、殴り、息もつかせぬラッシュを繰り出す。


「そうでなくてはっ」


 しかしながら、みずちは濡れた水色の髪を風に吹かせながら、両手に水を集め、薙刀めいた長柄武器を作り出し……。


「接近戦なら得意分野だ、あれ?」

「な、なんで。引き込まれちゃうサメエ?」


 みずちは水薙刀を風車のように回してドリルを受け流しつつ、刃とは逆の石突部分を使って痛烈なカウンターを桃太の胸に直撃させた。


「けはっ」

「ご、ごめんなさい。紗雨の動きが読まれちゃってる」

「だ、大丈夫だよ。紗雨ちゃん」


 桃太は呼吸を荒げながらも、心配ないと首を横に振った。

 同時に、彼が交戦の瞬間、足元に埋め込んだ水手裏剣が砂浜から飛び出して、みずちの水色の髪をかすめた。


「見えなかった。いつの間にっ」

「我流・水刀。もう一発!」


 ほんのわずかに意識が逸れた瞬間をついて、桃太が再び放った蹴りが、みずちの握る水槍に直撃し、破壊に成功する。


「紗雨ちゃんがまっすぐ行って、俺が横と後ろを走る。動きが読まれるなら、逆用するまでだ。二人なら、負けるものか!」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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