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第591話 佐倉みずちの戦闘術

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「な、なんでジイチャンから習った紗雨の技が使えるサメ? ひょっとしてみずちさんは、姉弟子だったサメエエ?」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたと一体化し、彼がかぶるサメに似たお面となった少女、建速紗雨たけはやさあめは水柱によって打ち上げられながら、愕然がくぜんとした。

 彼女が得意とする決め技、〝銀鮫竜巻穿孔撃シャーク・サイクロンドリル〟に加えて、〝銀鮫竜巻落としシャーク・サイクロンフォール〟に似た技まで使われたのだ。偶然とは思えなかった。


「いいえ、姉弟子ではないわ。カムロが紗雨ちゃんに教えた技は、元は貴方の祖先の一人が使っていたものなの。わたしはよく彼女の練習相手になっていたから、習得できたのよ」


 水色の短髪の上にセーラー帽をかぶり、水兵服を着た少女、佐倉みずちは前方へ真っ直ぐ伸ばした両手を包み込むように、スイカ大の水球を作りあげる。


「わたしがカムロにその技を伝え、カムロが紗雨ちゃんに伝えたわけだから、わたしは貴方の大師匠おおししょうで、貴方はわたしにとって孫弟子にあたるわ。必殺技とは違うけど、こんな技もあるのよ」

「なんと、師匠の師匠は大師匠って言うんだ? って、なにかが飛び出してくる?」

「知らないところで、いきなり人間関係が増えたサメエ。回避サメエエっ」


 桃太達は、水柱を足裏から放った衝撃波で打ち寄せる波を蹴り飛ばして離脱するが……。

 その直後、水球から放たれた閃光の如き水刃が着弾し、およそ五〇メートル先の海面までバッサリと断ち切った。


「あ、あれは、まさかウォーターカッターか?」

「えっと、こんにゃくからダイヤモンドまで切るとかで有名な技術サメエ?」


 圧縮した水をジェット噴射することで、金属すらも切断する技術だが、〝鬼の力〟で再現された破壊力は凄まじかった。

 みずちが操る水の刃は、海面に届くまでの砂浜の一部と、その先にある磯辺の岩盤すらもばっさりと切り裂いていたのだから。


「殺意高っ。必殺技じゃなくても、あんなの当たったら死んでいたぞ」

「大師匠が、みずちさんが技を変えたサメね? そうじゃなかったら、御先祖はどれだけ好戦的だったんだサメエエ!?」


 桃太達のツッコミに対し、みずちは二の矢、三の矢とばかりに、矢継ぎ早に水刃を繰り出しながら、過去を懐かしむように告げた。


「あら、わたしの知る貴方の先祖の一人は、とても穏やかな人だったわよ。でも、お嫁さん達同士で意地の張り合いをすることだってあるから、彼女は自衛の為に技を鍛えていたのよ」

「自衛どころかやり過ぎサメエっ。ジイチャンが結婚しなかった理由って、本当はスサノオの奥さん達が怖かったからじゃないのかサメエ!?」

「紗雨ちゃん。俺も、クマ国神話のスサノオさんがあんまり羨ましくない気がしてきたよ」


 桃太は、スサノオのことを、彼の師匠であるカムロと同様、際立った益荒男ますらおぶりで君臨する神々のリーダーだと思い込んいた。


(でも、師匠、カムロさんが教えてくれた〝生太刀いくたち草薙くさなぎ〟のもとになった技は、奥さん達を見返すために編み出したんだよな。つまり、尻に敷かれていたのはスサノオさんの方だった……)


 カムロから聞いた、奥義の開発秘話を信じるならば、夫婦間の天秤がどちらに傾いていたかは明らかだ。

 スサノオは、複数人のおっかない奥方に包囲され、ジタバタともがいていた可哀想な旦那であった可能性も十分にある。


「紗雨ちゃん、桃太君。あのカムロを頷かせるのなら、わたしを上回るくらいの力を見せて!」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
トータ君よ……君は自覚がないだけで、スサノオと同じ〇等分ルート確定なのだよ。 まったく、男はつらいね♪
>お嫁さん達同士で意地の張り合いをすることだってあるから、彼女は自衛の為に技を鍛えていたのよ 狸虎&姫将軍「「今日の食事当番は我々が!」」 侍女&執事「「却下!」」
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