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第587話 呉陸羽と呉栄彦への問いかけ

587


「この戦闘艦トツカを譲渡するには条件がある。桃太君、紗雨ちゃん、最後の試練じゃ。わしとみずちに勝ってみせろ」


 異世界クマ国ウメダの里の顔役である赤いサマースーツを着た黒髪の麗女、田楽おでんに試練をもちかけられて……。


「みずちさんも戦うんですか?」

「おでんオネーチャンはやりかねないと思っていたけど、みずちさんもサメエ?」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたと、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨は、水兵服を着た水色髪の少女を見た。

 彼女、佐倉みずちこそは、亡き火龍アテルイから空陸海移動が可能な戦闘艦トツカを預かった管理人だったからだ。


「大切な友人の遺品を渡しても、すぐに壊されたらたまらない。カムロに挑むなら、せめてわたしたちくらいは越えてもらわないと」


 桃太も紗雨も、……桃太の師匠であり、クマ国代表カムロと戦う田楽おでんのデタラメな強さをクマ国の頂上決戦で目撃している。

 同じ付喪神つくもである佐倉みずちが戦列に加われば、これまで戦った八岐大蛇の首すら超える強大無比なチームとなることだろう。


「わかりました。お二人の胸を借りるつもりでやります」

「カムロジイチャンをぶん殴る前の予行演習サメエ。おでんオネーチャンとみずちさんには、こちらからお願いするサメエエ」


 それでも桃太と紗雨は、おでんとみずちの期待に応えるべく、戦うと決めた。


「カムロめ、本当に弟子にも養女にも恵まれたのじゃなあ。羨ましいわい」

「桃太君も紗雨ちゃんも、カムロと戦うことをためらわないあたり、多かれ少なかれ鬱憤うっぷんがたまっていそうだけれどね」


 みずちは桃太達の言動から、二人の心情をおおよそ察したらしい。

 彼女は次に、桃太のチームメイトである、ベテラン冒険者の呉栄彦くれはるひこと、彼の姪たる山吹色の髪を三つ編みに結った少女、呉陸羽くれりうに向き直った。


「呉栄彦さんと呉陸羽さんとはどうする? もう願いは叶ったのでしょう。戦う理由はないのではなくて?」


 桃太達は、異世界クマ国代表カムロに挑む切り札として戦闘艦トツカを譲り受けるために、おでんとみずちに挑む必要があったものの、他二人のチームメイトには関係ないのだ。


「まさか、こんな異世界体験をせずに帰宅するだなんて、冒険者としてあり得ない。〝鬼神具きしんぐ酒虫水瓶しゅちゅうすいびん〟も光栄だと喜んでいる。今日はガッツリ飲ませてもらうさ」


 されど、栄彦は、赤い山椒魚さんしょううおのような虫が描かれた金属製の水筒(スキットル)を力強く握りしめてながら、不敵な笑みを浮かべ――。


「おじさま、酔うのはほどほどにしてくださいね。桃太お兄様の隣に立つのはうちです。紗雨ちゃんにも譲りません。〝鬼神具・天馬のくつわ〟と共に証明してみせます!」


 陸羽もまた馬の沓に似た、U字型のナイフを手に構えをとった。


「サ、サ、サメー、紗雨は桃太おにーさんのパートナー、負けないんだサメエ」


 紗雨は、陸羽の告白めいた宣戦布告に泡をくって、桃太の左腕にとびついた。


「これより、遊戯用迷宮〝U・S・Jウメダのすごいジャングル〟地下三〇階到達記念、エキシビジョンマッチを開催する。ウメダの里はもちろん、迷宮内の休憩施設にも中継するゆえ、楽しんで欲しい。では始めようか!」


あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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>桃太お兄様の隣に立つのはうちです >紗雨は桃太おにーさんのパートナー 黒騎士(無言で桃太の隣に立っている)
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