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カクリヨの鬼退治〜追放された少年が、サメの着ぐるみ少女と共に、勇者パーティに逆襲する冒険譚〜  作者: 上野文
第八部/第八章 出雲桃太と田楽おでん、三世界分離計画について論ずる
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第579話 田楽おでんが守りたいもの

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「わしとアテルイは二千年前、争いと断絶で滅びゆく世界くにを救うべく立ち上がり、我々の主人を盛り立てて新たな神にしようと戦った。平和で、苦しみのない、誰もが幸せになれる理想郷を目指してな。されど武運つたなく敗北し、誉も何もかもを奪われて咎人とがびとに落とされた」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、鴉の濡れ羽がごとき黒髪が美しい付喪神つくもがみ田楽でんがくおでんのハリのない台詞に思わず反発した。


「だから、諦めたんですかっ。クマ国で一番強い師匠……カムロさんと競り合うくらいの力を持ちながら、どうして?」

「では逆に尋ねるが、力があったら戦わなければならないのか? 主人を、仲間を失い、夢も理想もないのに戦い続けろと? その方が理不尽じゃろうが?」

「そ、それはそう、ですが……」


 桃太はおでんの反応に困惑した。


(だって、今でも見惚れるくらいに強いじゃないか。ウメダのすごいジャングルだなんて、本当に凄いアトラクションを運営しているじゃないか。俺がリッキーの仇を討とうとカムロさんに師事したように、敗北から再起する力を求めているんじゃないのか?)


 桃太は過去の自分のように、おでんがなにかしらの目的や野心を抱えているものと推測し、そこに交渉の活路を見出していたのだ。

 

おごれるものは久しからず、栄華はいつの日か終わる。地球において、フランスの王制がギロチンのつゆとなり、日本で武士の世が終わりを迎えたように、私やアテルイが事を起こさずとも、我々の主人に冤罪えんざいを押し付けた奴らの痕跡こんせきは消え去ったよ」

「そうか、貴女はっ」


 しかしてこの瞬間、桃太は、己がおでんの心情を決定的に勘違いしていたことを思い知った。


「前々世界も前世界も朽ち果てたが、カミムスビは平和な国をおこしてくれた。あの子の治世、今のクマ国こそは、わしや主君やアテルイが過去に夢見た世界に他ならない。地球や異界迷宮カクリヨの繋がりを断つ〝三世界分離〟という荒療治が必要であっても、その安定した世界を守りたいと思うのは罪か?」


 桃太も、彼が率いる冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟の仲間達も、ウメダの里の実力者たるおでんが、カムロと対立する立場にあると想定していたが、……事実はむしろ逆だ。

 おでんこそはカムロ最大の理解者であり、ウメダの里という経済圏を創りあげ、クマ国代表である彼の治世を支える最大のサポーターだった。


「おでんさんっ。それでも貴方は一度、平和で苦しみのない世界を目指したんでしょう? それで良いのですか?」


 桃太はショックのあまり大声で叫んだものの、おでんはいさめるように手のひらを立て、首を横に振った。


「桃太君、お姉ちゃん、じゃ。わしの知るカムロという男は、地球を攻撃したいわけではないし、身勝手に世界環境を作り変えるつもりもないよ。ただ地球とカクリヨとクマ国、三つの世界をそもそもの〝あるべき〟世界に戻すだけじゃ」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
>我々の主人に冤罪を押し付けた奴らの痕跡は消え去ったよ ついでに人類丸ごと消し去りましたけどね(遠い目)
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