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カクリヨの鬼退治〜追放された少年が、サメの着ぐるみ少女と共に、勇者パーティに逆襲する冒険譚〜  作者: 上野文
第八部/第八章 出雲桃太と田楽おでん、三世界分離計画について論ずる
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第578 謎の麗女、田楽おでんの過去

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桃太とうた君達が見抜いたとおり、八岐大蛇との二度目の戦いで助力してくれた神々の正体は、大半が人間じゃ。しかし、一千年前に〝死者蘇生〟という新たなルールを持ち込み、今日まで人々の営み見守ってきたカミムスビだけは、この世界における本物のカミといっても差し支えない存在なのじゃ」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、鴉の濡れ羽がごとき黒髪が美しい、赤いサマースーツを着た付喪神つくもがみ、田楽おでんから、創世神カミムスビの正体を聞き出すことができた。


(そうだ。おばちゃんならば、カムロさんが目論む、地球、異世界クマ国、異界迷宮カクリヨの繋がりを断つ〝三世界分離計画〟にも反対してくれるかも)


 桃太はそう期待したが……。


「あの娘、創世神カミムスビは前々からカムロに譲りたがっていたからな。これまでは禅譲ぜんじょうしようにも、神に至るために必要なエネルギーのあてが見つからず、不可能だったのじゃろうが……。目星がついたとなれば、自ら進んで神の座を降りることじゃろう」

「なんてことだっ!?」


 続くおでんの言葉を聞いて真っ青になった。


(まずい。あれだけの苦労を重ね、実績もある師匠だ。クマ国をずっと見守ってきたおばちゃん幽霊が、後継に選んでも不思議はない)


 桃太が納得したのを見て、おでんは決定的な結論を口にした。


「桃太君もわかるじゃろう?

 カムロのやり方が……、新たな神となり、〝地球、クマ国、カクリヨはそれぞれバラバラの世界である〟というルールを敷くことが、唯一正しいとは言わん。しかし、わし自身には止める気もない。ゆえにこれ以上、力を貸すことはできない。カムロとの戦いでも言ったがね。わしは、もう世界の危機には関わりたくないのじゃよ」


 おでんの主張は正しい。

 しかし、桃太は地球に生きる人間として、何もせずに受け入れるわけにはいかなかった。


「待ってください。八岐大蛇の首はまだ残っています。放置すればクマ国にも被害が出るっ」

「八岐大蛇とて、〝鬼の力〟をばら撒く根源……異界迷宮カクリヨと完全に分離できたなら弱体化するじゃろう。ひょっとしたら、分離した方が討伐が楽になるかも知れん」

「それだけじゃない。今三つの世界を分離すれば、地球はたいへんなことになります! なぜそれだけの力があるのに、より良い未来を掴もうとしないのですか?」


 桃太の問いに対し、おでんは浅く息を吐いた。


「力があり、未来を掴むために戦ったからじゃ」

「え? 未来を掴むために戦った……から?」


 桃太は、おでんの言葉が理解できなかった。


「キミ達の住む地球に、フランスという国にはジャンヌ・ダルクという女傑が、そして日本には源義経みなもとのよしつねという英雄がいただろう? 共通点はわかるかの?」

「歴史の授業で習いました。二人とも天下をひっくり返すほどの戦果をあげながら、汚名を着せられて死んだ英雄です」


桃太の回答に、おでんは懐かしそうに目を細め、次に自身をあざけけるように唇を歪めた。


「わしは、いわばジャンヌにとっての戦友、青髭あおひげジルドレエで、義経にとっての懐刀、武蔵坊弁慶むさしぼうべんけいよ」

「……おでんお姉さんは、誰か大切な人を亡くされたんですか?」


 桃太は思わず息を飲み、おでんの今にも泣きそうなクシャクシャになった横顔を見た。


「わしとアテルイは二千年前、争いと断絶で滅びゆく世界くにを救うべく立ち上がり、我々の主人を盛り立てて新たな神にしようと戦った。平和で、苦しみのない、誰もが幸せになれる理想郷を目指してな。されど武運つたなく敗北し、ほまれも何もかもを奪われて咎人とがびとに落とされた」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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>平和で、苦しみのない、誰もが幸せになれる理想郷を目指してな その理想郷の正体、死んでも生き返る無間地獄なんだよなぁ(ただでさえ、物資の枯渇からくる戦が起こってる状態での)
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