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カクリヨの鬼退治〜追放された少年が、サメの着ぐるみ少女と共に、勇者パーティに逆襲する冒険譚〜  作者: 上野文
第八部/第八章 出雲桃太と田楽おでん、三世界分離計画について論ずる
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第576話 桃太、異世界クマ国の死者蘇生というルールを知る

576


「カムロはおそらく、かつてカミムスビがクマ国を救った手段と同じことをやろうとしている。なんらかの方法で彼女の後継神となり、〝地球、クマ国、カクリヨはそれぞれバラバラの世界である〟という新たなルールを敷いて、世界構造を変化させようとしているのじゃ」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、一千年以上前から異世界クマ国で生きる付喪神つくもがみ田楽でんがくおでんが明かした、カムロによる三世界分離構想の真相に衝撃を受けて一歩後退し……。


「あ、あぶなっ」


 防音結界を構成するしめ縄に足をとられ、危うく転ぶところだった。


「おでんお姉さん。本当に、そんなことができるんですか?」

「できる。桃太君、これは他の者には絶対に内緒じゃぞ。

 一千年前、八岐大蛇が一度目の侵略で先代文明を滅ぼした後……。

 カミムスビはたった一人で交戦を続けて、クソヘビどもから、命や魂、星のエネルギーとでもいうべきものを取り戻して、〝死者復活〟という新たなルールをひっさげて世界を新生させた。

 一度は全滅させられた旧世界の人々を、新たな世界に復活させたからこそ、あの子は創世神と呼ばれているのじゃ」


 桃太は、おばちゃん幽霊の左右が違う赤と青の瞳の色と、穏やかな顔を想起した。

 彼が思っていた以上に、おばちゃん幽霊は凄い存在だったらしい。


「そう、なんですか? じゃあっ」


 桃太の脳裏を、テロリスト団体〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟の幹部であった悪漢、黒山犬斗くろやまけんとの銃撃から自身を庇って死んだ親友、呉陸喜くれりくきの最期がよぎった。


(ひょっとしておばちゃん幽霊に頼めば、死んだリッキーを甦らせることもできるんじゃないか? そうしたら一緒に冒険して……あれ?)


 桃太は、親友である陸喜を蘇生させた未来を予想して、彼が自分の隣で笑う姿が想像もつかないことに愕然がくぜんとした。


(待て、冷静になるんだ。仮に異世界クマ国の秘術で生き返ったとしても、リッキーが堂々と人前に姿を見せることができるか?)


 答えは否、だ。

 異界迷宮カクリヨの深層で行方不明となり、異世界クマ国で命を落とした二河瑠衣にかわるいとは異なり、呉陸喜は浅層で多くの者に死ぬ瞬間を目撃されている。

 もし彼が何事もなく復活すれば、疑問視して調査をはじめ、創世神カミムスビであれば死者蘇生が可能だと突き止める者がいずれ現れるだろう。

 そうなれば地球における生死の理、常識、社会理念が崩壊しかねないリスクになる。


(きっと死者蘇生を望む地球の人たちが、押しかけるだろう。最悪の場合、生き返るから問題ないって異世界クマ国へ戦争を仕掛ける悪鬼だって生まれかねない。そうなれば師匠が、カムロさんが根本的解決のために必ず三世界分離を強行し、混乱でより多数の死者が出てしまう)


 桃太は胸の奥にずんと重いものを感じて、息を吐いた。

 そもそも、彼の知るカムロは望んで神になろうとする人物ではない。

 地球、クマ国、カクリヨの三世界を巡る情勢は、そんな師匠に分離を決断させようとしている。


(カムロさんは、クマ国代表としてやるべきことをやるだろう。リッキーなら、そこまで突き止めて、あいつなりに師匠を乗り越える手段を模索するはず。となれば、弟子である俺とは距離を取るはずで……あれ、そんな奴に心当たりがあるような)


 桃太は敵とも味方ともつかぬ好敵手、黒騎士の姿を脳裏に浮かべた。


(黒騎士! あいつ、まさかリッキーなのか!?)


――――――――――

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
>死者蘇生を望む地球の人たちが、押しかけるだろう そして、蘇生判定に失敗したら逆切れする遺族とか友人とかもでてくるんですね、ワカリマス アトラスさんのWizでは、いくら信仰心高めてもロストの可能性があ…
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