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第571話 紗雨の先祖

571


「試練を越えたものに対してでさえ、叶えるべきではない願いもある、か。難しいことだ……」


 鴉の濡れ羽がごとき黒髪が美しい麗女、田楽でんがくおでんは、山吹色の髪を三つ編みに結った小柄な少女、呉陸羽くれりうの願いを叶えて彼女の兄の生存を告げた後、悲しげな声でぽつりと呟いた。


「おでんお姉さん、どうしたのですか? 顔色が悪いですよ。どうかされましたか?」


 陸羽が心配して顔を覗き込んだものの、おでんは赤いサマースーツから伸びた腕を振って彼女から離れ、何でもないと言い繕った。


「すまない、こちらの話だ。陸羽ちゃん、次は紗雨ちゃんを呼んでほしい」


 次にしめ縄で限られた、防音結界の内部へ招かれたのは、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめだ。

 暗い海の中を深海魚が泳ぐプラネタリウムに似たフロアに立つ少女は、いつになく神妙な面持ちで、おでんに尋ねた。


「おでんオネーサンは、クマ国伝統のクイズレースを始めたのは、紗雨のご先祖だって言っていたサメ。紗雨は自分の先祖と家族について知りたいんだ、サメエ」

「わかった。明かせるかぎりのことは教えよう。紗雨ちゃん、これまでスフィンクス人形が出してきたクイズを覚えているか?」

「だいたいわかったサメエ」


 紗雨は自信満々胸をはったものの、おでんはいぶかしげに首をひねった。


「なんだか不安じゃなあ。まあ良い、可愛い妹を教え導くのも良き姉のつとめ。前提から話すか」


 おでんは軽く柏手を打って、改めて紗雨に向き直った。


「創世神カミムスビは、先代文明を滅ぼした八岐大蛇を追い払い、クマ国を創世したが……。

 二度目の侵略を受けた際には、悪鬼どもに追い詰められて、神の国たる高天原たかまがはら、異なる世界へ援軍を頼んだ。

 そうしてやってきたのが竜殺しの武神スサノオ。今、紗雨ちゃんの後見人であるカムロと同一視されている存在じゃよ」


 おでんから養父の秘密を聞かされて、紗雨はぷうと頬を膨らませた。


「サメエ。スサノオさんは、たくさんの女の人とつきあった、とんでもない人と聞いたサメエ」

「まったくもってその通りじゃ」


 紗雨が怒りをあらわにすると、おでんも赤い生地に包まれた、白い背中を震わせながらくつくつと笑った。


「紗雨ちゃん。スサノオにはクシナダヒメ、オオイチヒメ、アラハバキ、ミカハヤヒという四人の妻がいた。

 ヒルコについてはよくわからんが、わしが遠目から見た限りではデキていたから、五人目の妻だったんじゃろうよ。

 そしてスサノオ夫妻こそ、紗雨ちゃんのご先祖なのじゃ」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
>ヒルコについてはよくわからんが、わしが遠目から見た限りではデキていたから、五人目の妻だったんじゃろうよ ええ、一番スサノオを剝いて、くんずほぐれつしてましたからね(生暖かい眼差し)
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