表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
575/805

第569話 呉陸喜の安否

︎569


「いやったあああ。お酒、ごちになります!」

「そうか。叶える願いは、単純に大きければ大きいほど良いというものではないか。お姉さんも学ばされたよ。栄彦君、次は君の姪を呼んでくれ」


 鴉の濡れ羽が如き黒髪のサマースーツを着た麗女、田楽おでんは、ベテラン冒険者、呉栄彦くれはるひこに対し、好物の酒を振る舞うことを約束した。

 歓喜にむせぶ叔父に続いて、呼びだされたのは、山吹色の髪を三つ編みに結った小柄な少女、呉陸羽くれりうだった。


「おでんお姉さん。うちの兄、呉陸喜くれりくきは地球日本の元勇者パーティ〝C・H・Oサイバー・ヒーロー・オーガニゼーション〟が引き起こしたクーデターで命を落としました。でも、兄の死体は幹部だった鷹舟俊忠たかふねとしただの命令で地上に運ばれた後、行方不明になっているんです」


 陸羽は感情のあまり、両の瞳を涙で濡らし、唇を震わせながら願いを口にした。


「うちは、本当にお兄様が死んでしまったのか、どうしても知りたいのです。おでんお姉さん、どうか力を貸してください」


 おでんは困ったように眉をひそめ、サマースーツの胸ポケットから手帳を取り出して、ペラペラとめくった。


「わかった。実は既に調べてある。まずそなたの兄、呉陸喜は間違いなく一度命を落としている」

「……」


 陸羽はショックのあまりふらりと倒れたが、とっさにおでんが手を伸ばして支えた。


「陸羽よ。信じられないかも知れないから、順を追って話す。

 クマ国神話を学んで、もう気がついているかも知れないが、クマ国の創世神カミムスビは、魂と生命に干渉する異能を持っている。

 八岐大蛇の犠牲となった前世界の人々の魂を取り戻し、可能な限り復活させたのがクマ国の創世であり、彼女の治世の始まりだ」

「は、はい?」


 陸羽はあまりに桁のはずれた異世界神話の真相に目を丸くして、次に胸の中で希望が膨れ上がった。

 地球においては地球の物理法則が支配するように、異世界クマ国では異世界クマ国の法則が支配しているのだ。


「じゃあ、カミムスビさんなら、死んだ兄を生き還らせることができるんですか?」

「そうだ。正確には、カミムスビでなくても、禁忌の儀式を用いれば復活する可能性がある。なぜなら、カミムスビという神格が管理する世界、〝クマ国には死者復活の概念がある〟からだ。……そして、今はキミたちの故郷、地球もまた異界迷宮カクリヨを通じて〝クマ国と繋がっている〟」

「まさか、ひょっとして、そうなんですかっ!?」


 陸羽は思いもよらぬ事実を知り、雷にでも打たれたかのごとく愕然とした。


「今の地球は、カミムスビの影響で死者蘇生が可能なんだよ。施術可能な術者は限られているし、大抵は失敗して灰になるからオススメはしないがね。そなたの兄は、幸運にも冒険者組合本部で再び命を取り戻すことができたらしい」


 それは、桃太の親友であり、陸羽の愛する兄、呉陸喜の生存を意味していた。


「お兄様は、呉陸喜は、本当に蘇生して、生きているのですか?」

「そうだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>大抵は失敗して灰になるからオススメはしないがね 大丈夫、大丈夫、灰からでも蘇生可能 ささやき-詠唱-祈り-念じろ! ……(無言でリセットボタンに手を伸ばす)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ