第564話 ひきこもり事件解決の裏側
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「武神スサノオさんは公務を離れ、氷神アマツミカボシを叩きのめしたって言っていたよね。その後、カミムスビさんの館に料理を差し入れし、門の前で三味線を奏でて説得した。これでどうだっ!」
『――ほぼ正解です』
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、遊戯用迷宮〝U・S・J〟の最下層へ続く扉を守る三体のスフィンクス人形による最後の問いかけ――。
『火神ヒノカグツチと氷神アマツミカボシの喧嘩により、楽しみにしていたお祭りを潰され、度重なる心労に限界を迎えたことで、屋敷にひきこもった創世神カミムスビを神々はどうやって外へ連れ出したのか?』
――に対し、思考の袋小路に追い詰められながらも、仲間達の回答を活かして正答をひねり出し、見事に的中させた。
「「「やったー」」」
桃太達四人がハイタッチを交わす中、「ほぼ正解」という不穏な判定を下した半人半獣の人形が言葉を続ける。
『合格ですが、解答を補足します。あらゆる手を尽くしても創世神カミムスビが館から出てこないと悟った時、クマ国の神々は智神オモイカネの立てた作戦にのっとり、〝武神スサノオが館に料理を差し入れし、門の前で音楽を奏でて〟追い出しました』
桃太達がスフィンクス人形の過激な発言を聞いて、そろって口を開けたのも無理はない。
「「「ええーっ、説得するんじゃなくて、追い出しちゃった!?」」」
日本神話であれば知恵比べで平和的に解決したかも知れない問題に対し、クマ国神話が出した解決策はあまりに斜め上だった。
「そうか。太陽の熱では説得不能と悟り、北風の暴威をもって強硬な解決に出たんだね。食事の差し入れと三味線演奏で創世神カミムスビを油断させ、神々の中でも最強クラスの武神スサノオを突入させた。立て籠もり事件のオーソドックスな解決法だね。これならひきこもり対策に応用できても不思議はない」
ベテラン冒険者の呉栄彦が情け容赦の無い解釈をするも――。
「待ってください、おじさま。心労の極みだったカミムスビさんに、そんな暴力的な手段を取ったら、二度と心を開かなくなっちゃいますよ!」
彼の姪である山吹色の髪を三つ編みに結った少女、呉陸羽が異議を申し立てる。
「うーん。そこまで悪意があったとは思いたくないし、正解からもずれている気がするサメエ。単にスサノオさんが、ジイチャン並に酸っぱすぎる梅干しを差し入れして、下手な三味線の演奏なんてしたから、館から出てこざるを得なかったんじゃないかサメー」
そして二人のあとを引き継ぐように、クマ国代表カムロの養女である、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨が、もう少し温和で噛み砕いた解釈をしてくれた。
「カムロさんの梅干しは美味しいし、三味線も栄彦さんの話じゃそんなにひどくないはず。でも、スサノオさんはカムロさんと違うからな。紗雨ちゃんの言うとおり、ひょっとして百パーセントの善意だったのに、裏目に出た可能性もあるのか?」
あとがき
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