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第562話 最後の難問

562


『いよいよ第三問、最後の問題です。クマ国創世の時代、神々と呼ばれた者達は、創世神ひきこもり事件をどのように解決したのですか?』


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうた達は、三体並んだ半人半獅子はんじんはんししのスフィンクス人形のうち、真ん中に位置する最後の一体が投げかけた問いに冷や汗を流した。

 遊戯用迷宮〝U・S・Jウメダのすごいジャングル〟……その最下層たる地下三〇階にある記念碑に辿り着けば、迷宮運営者の田楽おでんが可能な限り、願いを叶えてくれるという。

 あと少し。しかし、そのあと少しが遠い。

 この門まで辿り着く前の地下二九階、氷結のフロアが非常に過酷な環境というものもあり……、スフィンクスビームで中継点まで戻されるのではないかという焦燥が、どうしても心を苛んでくる。


栄彦はるひこさん、わかりますか?」

「これが難題でね。創世神カミムスビが館から出てこないことを悲しんだ神々と人々は、さまざまな手段で館の外へ誘い出そうとしたらしい。最後の最後にスサノオが出てなんとかしたらしいが、当時にはもう作られていたという〝鬼神具きしんぐ酒虫水瓶しゅちゅうすいびん〟も詳細は知らないと言うし、オジサンも文献を見つけられなかった」


 最後の最後で、〝得点源(エース)〟であったベテラン冒険者、呉栄彦くれはるひこすらも匙を投げる超難問だった。


「わかったっ。ジイチャンに似ているスサノオさんなら、きっとサメの格好で集まって、コンサートを開いたサメエ。紗雨ならワクワクで飛び出すサメェ!」


 とはいえ、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめは、めげずに元気いっぱいで解答する。


(いや、それだと時系列が合わない)


 桃太は、そもそもクマ国にサメ映画が入ってきたのは、半世紀前に地球と繋がって以降のことだと知っていたため、さすがに無理筋と思いきや――。


『不正解です。神々は、創世神カミムスビの興味を引こうと、それこそサメに似た格好を含む様々な仮装に身を包み、一大コンサートを開きましたが、効果はありませんでした。次の方、どうぞ』

「サメエエ、カミムスビさんは頑固サメエ!?」

「「仮装といえ、本当にやったの!?」」


 意外や意外――。

 桃太達は、クマ国の懐深さを思い知ることになった。


「よし、ここは情報収集もかねて、あえて神話によくある路線でいこう。スフィンクス、解答だ。カミムスビが眠る館の周囲にクマ国中のニワトリを集めて鳴かせ、朝だと知らしめる。これはどうかな!」


 ここで、これまで数多くの難問を解いて来た栄彦が賭けに出たものの……。


『不正解です。里人が力を合わせてニワトリを集め、創世神カミムスビを起床させようと試したものの、氷神アマツミカボシがシメて焼き鳥をつくり、飲めや歌えと周囲を巻き込みながら騒いだことで成功しませんでした』

「「「アマツミカボシにひとのこころはないのかぁっ」」」


 桃太達は、説得の材料を食べるという、あまりにもな蛮行に全員揃ってツッコミを入れた。


『この騒動を知った武神スサノオは激怒。公務を放り投げて氷神アマツミカボシを追い回し、叩きのめしたそうです』

「「良かった。いや良くない。何も解決していない」」


 鉄拳制裁てっけんせいさいを受けたといえ、氷神アマツミカボシはやはり、とんでもないトラブルメーカーだったようである。


(むごい、むごすぎる)


 桃太は、桃太は彼の知るカミムスビこと、おばちゃん幽霊がハンカチを噛みながら窓の外をのぞく様子がありありと浮かんで、彼女の扱いに涙した。


『次の方、どうぞ』

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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>サメに似た格好 スフィンクスさん、匿名希望芸術から「鯨もわからないのか!?」というクレームが入ってますよ デモ行進?
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