表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
561/793

第555話 呉栄彦と〝修道鬼(モンク)〟

555


「さあ飲酒解禁だ、そろそろ本気を出すとしよう。舞台登場ぶたいとうじょう 役名宣言やくめいせんげん――〝修道鬼モンク〟!」


 ベテラン冒険者の呉栄彦くれはるひこは自らの役名ジョブを高らかに名乗ると、ローブを半ば脱ぎ散らし、鍛え上げられた肉体もあらわにする。

 そうして、遊戯用迷宮〝U・S・Jウメダのすごいジャングル〟の地下二九階をおおう氷の大地で、全長三メートルはあろうシロクマ人形と戦い始めた。


「ええーっ、水筒の中に入っていたのは水でしたよね? 朝、リウちゃんが確認していましたし!」

「桃太君、〝鬼神具きしんぐ酒虫水瓶しゅちゅうすいびん〟は物知りなだけじゃなく、能力も最高なんだ。いつでも瓶の中の水を、酒へ作り変えることができるのだから!」

「うわ、とんでもない能力だ。隠れて飲酒し放題じゃないか」


 桃太がツッコミを入れたのももっともで、シロクマ人形も被せるように吠えた。


「GUUUU( 戦場で飲酒とは、仮にも僧侶の役名を名乗る者がやることか)!?」

「ワイン、ジン、ビールに日本酒。洋の東西を問わず、古代の大寺院は酒造りの拠点でね。修道僧や僧兵は、酒造りの専門家でもあったのさ!」


 栄彦は酒に関するうんちくを一方的にペラペラと語りつつ、山のようにどっかり腰をおとして、お猪口ちょこを持つような独特の構えをとった。


「桃太君、紗雨ちゃんとリウを頼む。酒で体も温まってきたし、このシロクマは私が受け持つよ」

「わかりました。取り巻きの雪だるまは、俺達がなんとかします」

「「SNOWSNOW( ちいっ。その凍りついた足でどうするつもりだクソガキ)」」


 雪だるま人形達がなにやら不穏な声をあげたものの、桃太は印を切って靴の周囲に衝撃波をまとわせることで、靴にまとわりついた氷を粉砕。

 衝撃波を足場代わりに使い、陸羽や黒騎士が用いる蒸気鎧のホバー走行機能を模倣して、わずかに空中浮遊しながら氷原の上を走り始めた。


「こうすれば、なんとか戦える。リウちゃん、紗雨ちゃんをお願い」

「はうっ、わかりました。紗雨ちゃんを守りながら、蒸気鎧の修復を進めます」

「「「SNOWSNOW( わ、我々の槍があたらないだとお?)」」


 桃太が取り巻きの雪だるまの槍をかいくぐりながら交戦する様子を見て、シロクマ人形は改めて栄彦に意識を集中させる。


「GUUUUU( ほう、二足歩行の人間がこの足場で戦えるのか。お前はどうだ)!?」

「おおかた挑発しているのだろうが、立って戦えないのなら、寝て戦えばいいのさ」


 栄彦は、酔っぱらいのようなことを呟きながら、時に氷上に身を伏せ、時にダイナミックに転がりながら、手足をムチのようにしならせて、シロクマ人形の目鼻を打った。


「GAAAAAA( そんなものではっ)!?」

「そう吠えるなよ。こんなこともあろうかと重ねたクンフーだ。まだまだ捨てたものじゃないはずだぜ?」


 双方の見た目だけならば、攻撃力と防御力の差は歴然だ。

 栄彦はすべる足場を軽快に跳ねて、突き、刈り、殴り、と連続攻撃を浴びせかけるも、シロクマ人形の圧倒的な体格差と分厚い毛皮に阻まれて、ほとんどダメージを与えられていない。


「GAUUUUU( バカなことをする。そんなへなちょこパンチが通じるものか。なにいっ)!?」


 しかしながら、シロクマ人形は爪の生えた手で殴り返そうとしたところ、まるで酔っ払ったかのように下半身が崩れた。


「モンスターとのフィジカル差は術で補う。人形ゆえにどこまで生態を模しているか知らないが、粘膜から呪いをこめたアルコールを摂取するのはキツイだろ!」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

ブックマークや励ましのコメント、お星様、いいねボタンなど、お気軽にいただけると幸いです(⌒▽⌒)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
酔拳?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ