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第549話 呉陸羽、再びホワイトナイトに変身

549


「桃太お兄様。信じてください。うちだって成長したんです。

 舞台登場ぶたいとうじょう 役名宣言やくめいせんげん――〝白騎士ホワイトナイト〟」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたの眼前で――亡き親友の妹、呉陸羽くれりうの三つ編みに結った山吹色の髪が風に巻き上げられるように逆立つ。

 小柄な体躯をつつむ、ゆったりとした学校指定ジャージがぴっちりとした薄手の戦闘服に入れ替わり、背中から翼のように広かったオルガンパイプに似た排気口が特徴的な無骨な白い鎧が囲むように装着された。


「リウちゃん、この真っ暗闇なフロアで重武装は逆に危険だっ」

「いいえ桃太お兄さま。地球の機械技術を応用したため、全力稼働には燃料が必要と、やや特殊な〝鬼神具きしんぐ〟ですが、そのおかげもあって暗闇でも問題なく活動できます」


 陸羽が背負った蒸気エンジンが、高らかにうなりをあげる。

 すると、彼女が開いた両手のひらの中に、視界を閉ざす暗黒のとばりを引き裂く、目も眩むほどに明るい光球が生まれたではないか?


「周囲を照らすこともできますし、こうやって直接ぶつければ、牽制にもなるっ!」

「「GAAAAAA( うおまぶしっ)!?」」


 白騎士となった陸羽が、前方から迫り来る黒狼のぬいぐるみに向かって光球を投げつけるや、襲撃者達は視界を奪われたかのごとく棒立ちになった。


「やっぱりっ。モンスター役の人形も、生身みたいに機能するよう設定されているみたいです!」

「驚いた、そんな使い方があるなんてっ」

「GUUUU( キャストとしての誇り、認めてくれて嬉しいな)」


 桃太が蒸気鎧の新たな機能に驚く間にも、陸羽はオルガンパイプめいた排気口から赤黒い煙を吐き出しながら、光球に照らされたダンジョンの中を加速し、浮き足だったままの黒狼達に向かって切り込んだ。


「GAAAAA( 闇の中だからこそ、黒い体毛が生かせたのに。これじゃあ逆に目立ってしまうっ)!?」

「GAAAAA( おびえるな、リア充どもに天誅(てんちゅう)をくだすんだろう)!」

「言っている内容はよくわかりませんが、うちだって負けません」


 黒狼は四つ足で迷宮の壁を蹴りつつ集団で素早く動き回るも、陸羽はあたかも翼が生えたかの如き勢いで追いついて、ポカポカと殴りつける。


「「GYAN(ひょっとして、これってご褒美じゃないかっ)!」」

「「GYAGYAN(こ、これは敗北ではない、狼は群れで狩りをするのだから)!」」


 陸羽は前進を阻む黒狼達の大半を倒したものの、隠れていた一体が足を狙って体当たりを仕掛けた。


「GAA(同胞達よ。犠牲は忘れんゾ。ラッキースケベはいただきだ)!」

「きゃあ!」


 陸羽は着込んだ蒸気鎧の重量バランスの悪さもあって、ぐらりと体勢を崩されてしまった。


「あぶないっ。我流・手裏剣!」

「GUU(若造め、間合いが遠いわ。甘噛みだが、いっただきまぁす)」


 狼のぬいぐるみは、桃太が投げつけた衝撃波のこめられた石つぶてを前足の一振りで打ちはらい、少女の柔らかな喉首に牙をむいた。

 しかし、それは陸羽にとって計算通りなのだ。


「桃太お兄様、大丈夫です。〝蛇髪鬼へびかみのおにゴルゴーン〟の力を再現します。これが、うちの切り札っ。〝停止の視線光アイ・オブ・ゴルゴーン〟です!」


 陸羽の目からビームのような光が放たれるや、それを受けた黒狼は石化でもしたかのように一切の動きを止めてしまった。

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
>全力稼働には燃料が必要 ちょうど追加の燃料のあてもありますしね 栄彦「なんでこっちを見るのかな?」
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