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第548話 地下二八階、闇のフロア探索開始

548


「さあて、いよいよ地下二八階。次のフロアはどんな仕掛けが待っているのかな?」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたと仲間達が、遊戯用迷宮〝遊戯用迷宮〝U・S・Jウメダのすごいジャングル〟〟の閉ざされていた扉を開き、地下二八階へ一歩を踏みだした。

 厚い金属扉の先に待っていたのは、足元もおぼつかない真っ暗な迷路だった。


「こ、これはまずい。クマ国じゃ機械が使えないから、懐中電灯や携帯端末で照らすこともできない」

「サメエ。サメに変身して匂いで道を探ろうっと。あいたっ。頭を打ったサメエ」


 桃太や、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨たけはやさあめも、慣れない暗闇には苦戦してしまう。


「GUU( バカップルどもめ、遂に深層までやってきたか)……」


 そこへ、闇の中から四足歩行の黒い狼を模したぬいぐるみが前方と後方からぬるりと現れ、挟み撃ちをするように飛びかかってきた。


「なんか来たサメっ!?」

「紗雨ちゃん、俺の後ろに隠れてっ。我流・長巻ながまき!」

「GA( まずはお前だああっ)!?」


 桃太は咄嗟に右手に衝撃波を巻きつけ、紗雨に向かって噛みつこうとした獣の牙を受け止めて、ハイキックで首の付け根を狙って蹴り飛ばす。


「GYAN( あいったあ)!?」

「桃太おにーさん、ありがとうサメエ!」

「紗雨ちゃん、一緒に追い返すよ!」

「任せて、やっちゃうサメエ!」


 桃太と紗雨が前方の黒狼と交戦に入った、ほぼ同時刻。


「GUU( 歳の差カップル死すべし慈悲はない)!」

「やれやれ。この迷宮は、ファミリーで訪れる客はいないのかい? いらぬ勘違いをされている気がするよ」

「GUOO( それはそれで羨ましい。許せない)!」


 ベテラン冒険者の呉栄彦くれはるひこも腰にさしていた赤い山椒魚のような虫が描かれた金属製の水筒(スキットル)で黒狼の牙を受け止め……。


「鬼術・水矢」

「GYAN( ひどっ)!」


 筒の中から飛び出した水を矢に変えて、無防備な獣の腹を撃った。


「おじさま、助かりました」

「なあに、年の功ってやつさ。それにしても、目が使えないのは厄介だ」


 桃太ら四人は互いの背を庇うように方円陣を組むも、周囲はすでに黒狼のぬいぐるみに包囲されていた。


「残念だけど、ここでの戦闘は困難だ。一度地上に戻って松明やランタンでも持ってくるかい?」


 栄彦はそう提案したが、彼の姪である山吹色の髪を三つ編みに結った小柄な少女、呉陸羽くれりうは首を横に振って一歩踏み出した。


「おじさま、ここはうちに任せてください。異世界クマ国でも使える機械に当てがあるんです。〝天馬ペガサスくつわ〟、力を貸して」

 

 陸羽はジャージのポケットから、白く輝く馬のくつわに似た刃を取り出して掲げ、黒狼に対して果敢に向かって行く。


「リウちゃん。その〝鬼神具きしんぐ〟を使うのは、待ってくれ!」


 そんな陸羽を引き止めようと、桃太は思わず手を伸ばす。

 忘れもしない、冒険者育成学校、焔学園への転校前。

 陸羽が、桃太の親友でもある彼女兄、呉陸喜を失ったショックから、強大な〝鬼の力〟が宿る道具を御しきれずに、暴走状態に陥ったことを危惧したのだ。


「桃太お兄様。信じてください。うちだって成長したんです。

 舞台登場ぶたいとうじょう 役名宣言やくめいせんげん――〝白騎士ホワイトナイト〟」

あとがき

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>一度地上に戻って松明やランタンでも持ってくるかい? 栄彦さん、貴方腰のスキットルに燃料確保してるでしょう? ……エタノールは燃えるのよ?
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