第532話 右肩上がりの難易度
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「紗雨ちゃん、このウメダのすごいジャングルは、楽しみながら鍛錬できる素敵な施設なんだ。クイズも同じだよ。答えは明かされるんだから、メモをとって少しずつ解いていけばいい。大丈夫、俺にもカッコつけさせてよ」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太は、遊戯用迷宮〝U・S・J〟の門を守るスフィンクス人形のクイズに答えられず……、銀色のサメに変身して落ち込む建速紗雨を抱き上げて慰めた。
「俺達は、無茶してまで迷宮踏破の賞品で願いを叶える必要なんて無いんだ。新しいサメ映画を見たいなら、地球に戻った時に二人で探そうよ!」
「そうサメね!」
紗雨は元気を取り戻したのか、桃太の腕の中で銀色のサメから銀髪碧眼の少女へと姿を戻し、サメの着ぐるみからの伸びたしっぽかざりをフリフリと動かしながら上機嫌で歩き始めた。
(今思えば、カムロさんがウメダの里へ来る前に色々と観光案内してくれたのは、〝ウメダのすごいジャングル〟で待ち受けるクイズ対策でもあったのか。……師匠は、俺が願いを叶えることを望んでいるのか?)
桃太は迷ったものの、そんなことより紗雨と二人で過ごす時間の方が大事だと、迷宮探索に集中した。
「ORC…ORC…(オークです。元ネタだと豚じゃないのに、最近は豚扱いされています)」
「ORC…ORC…(オークです。おでん様を惑わせた、地球日本のサブカルとカップル許すまじ)」
「なんだかよくわからないけど、ふっとべ!」
「サメエ!」
桃太と紗雨はお邪魔虫人形を蹴散らし、道中を阻む様々なギミックを解き明かし……。
『問題です。これは、変幻自在の肉体を持つ女神ヒルコが残したとされる壁画の写しですが……。この絵に描かれているクマ国で一番高い山を答えなさい』
「山にはとても見えないんだけど、ひょっとしてフジ山?」
『正解です。お進みください』
「クマ国のフジ山は、日本の富士山とは形からして違うんだけど、そんなこと関係なしに〝サメの幽霊みたいなもの〟が描かれていたサメエ。描いた人とは仲良くなれそうな気がするサメエ♪」
幸運にも助けられてクイズ問題も次々に突破し、遂に深層たる地下二一階へと進んだ。しかし、ここで難易度が更に上昇した。
『問題です。クマ国創世期に活躍した力自慢の英雄、闘神タヂカラオの得意技は何でしょうか? 以下三枚の壁画の写しから、選びなさい』
「このジャーマンスープレックスぽい絵サメ。乂が言っていたから間違いサメっ!」
『またの挑戦をお待ちしています。次の方どうぞ』
「乂のバカっ、おたんこなすっ。デタラメを教えられたサメエエ」
択一問題になった代わりに、正解がその場で明かされなくなったのである。
「えーっと、カムロさんが案内してくれた神社で見かけた気がするぞ。この正拳突きっぽい絵です」
『正解です』
地下二一階は三択だったため、カムロブートキャンプで鍛えた桃太が半ば当てずっぽうながら解くことが叶った。
しかし、地下二二階は六択、地下二三階は一二択と解答が困難になり、いよいよあと七階層となった地下二四階最後の扉では――。
『問題です。クマ国創世を描いたとされる壁画の写しを、以下の百枚から四つ選びなさい』
と、難易度が天井を突き抜けた。
「わからないけど、このおめでたそうな太陽の絵を四枚選ぶサメエ」
「俺が選んだ星の絵もダメか。やみくもに挑んでも解けそうにないな。これは一度出直そう」
『またの挑戦をお待ちしています。罰ゲームのスフィンクスビーム!』
あとがき
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