第531話 紗雨、クイズギミックに苦戦する
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「サメエエエ、オタスケエエ!?」
「紗雨ちゃん、落ち着いて。ゆっくり考えれば解けるから!」
他の誰であろう、地元である異世界クマ国生まれ、クマ国育ちの建速紗雨は、遊戯用迷宮〝U・S・J〟の門を守るスフィンクス人形が問いかけるクイズに答えられず、幾度となく返り討ちに遭った。
『問題です。道部分を除いた畑の面積を一分以内に答えなさい』
「ええ、っと道部分の面積がこうで、畑が、サメエ、間に合わないサメエっ」
『正解は五〇平方メートルです。次の方どうぞ』
たとえば算数の問題で、余計な道の分の幅を、対象である畑の縦横から最初に除外するセオリーを知らず、真っ正直に計算してタイムアウトしたり――。
『問題です。ギオンの里で使われる男神の神輿に使われた袈裟懸けの色を答えなさい』
「え、えと、あのお神輿、ケサガケなんてあったっけ? 思い出せないサメエ」
『正解は紫色です。次の方どうぞ』
一番詳しいはずの地元民にも関わらず、地理問題に歯が立たなかったり――と、連戦連敗だった。
無論、失敗したのは紗雨ばかりではない。
『問題です。おでんに入れる根菜をひとつ答えなさい』
「野菜だなっ。ならば小松菜に決まっている。マイナーだが、あの苦味が素晴らしい」
「キャベツでしょ。ロールキャベツは大好物なんだ」
『正解は、大根などです。それらは葉物野菜です。設問はちゃんと聞いてください。罰ゲームのスフィンクスビーム!』
「関中あ、根菜の定義くらい覚えとけバカモン!」
「羅生だって思い切り間違えたじゃないかっ」
少し前を先行していた関中利雄や、彼と組んだ羅生正之などは、問題文の聞き間違いでピンクのビームを浴びていたし……。
『問題です。筋肉を鍛える上で重要と思われるトレーニングを一分以内に語ってください』
「え、アタシ、特別な筋肉トレーニングとかしたことないよ。柔軟性に持久力、全体のバランスが大事じゃん」
「それに加えて肉体よりも心。そう、〝勘違いストーカーにならない〟強い心が何より大切だと思う。石貫満勒、アイツだけは許さない!」
「BUNOO!?」
『さすがに回答として認められないので、図書館へ行ってください。スフィンクスビーム!』
サイドポニーの目立つ式鬼使いの乙女、柳心紺や、瓶底メガネをかけた白衣の少女、祖平遠亜も、それぞれの拘りか心の弱い部分を突かれたのか、スタート地点に戻されていった。
「サメエエ。また桃太おにーさんに頼っちゃうサメエ……」
紗雨にとって幸運だったのは、スフィンクスによるクイズが、チームでの攻略が認められていたことだろう。
『問題です。クマ国において、流星群の天体観測で有名な里を答えなさい』
「エチゼンの里です」
『正解です。チームメイトと共に先へお進みください』
桃太がクイズへ挑み、正解することで紗雨も先へ進むことができたからだ。
「紗雨はだめサメー。桃太おにーさんの足を引っ張っちゃってるサメー」
とはいえ毎度失敗していては、落ち込むのも無理はない。紗雨は銀色のサメに変身してバッタンバッタン転げ回った。
「紗雨ちゃん、このウメダのすごいジャングルは、楽しみながら鍛錬できる素敵な施設なんだ。クイズも同じだよ。答えは明かされるんだから、メモをとって少しずつ解いていけばいい。大丈夫、俺にもカッコつけさせてよ」
あとがき
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