第530話 新たな障害、スフィンクスの謎かけ!?
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「負けるかあっ」
「サメパワー全力全開サメエエっ」
「MIMIMI!?」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太に、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女、建速紗雨も加勢し、二人がかりで舌を引っ張り続けると……。
ピエロ顔のミミックもとうとう耐えきれなくなったのか、鈍く光る鍵を吐き出して脱兎とばかりに去っていった。
「な、なかなかの強敵だったね」
「それでも桃太おにーさんと紗雨の勝利サメエっ。カギも見つかったサメエ」
「早速試しに行こうかっ」
桃太と紗雨はパァンとハイタッチを交わし、通行不能だった扉の開錠に成功する。
「さて、地下一〇階もそろそろ最後かな。あ、また林魚がいるね」
「サメメメ? なんか様子がおかしいサメ?」
桃太&紗雨ペアを筆頭に、抜群の速度で遊戯用迷宮〝ウメダのすごいジャングル〟探索を進めた冒険者パーティ〝W・A〟だが……。
探索開始から三日目を迎え、ある程度の深さまで来ると、進行速度が一気に遅くなった。
『それでは、クイズに答えてください。解答時間は一分です』
迷宮中層にあたる地下一〇階からは、次の階層へと続く扉の前に、フロアボスならぬ〝クイズを問いかける門番〟が立ち塞がったからである。
「あ、あの人形はエジプトのスフィンクス?」
「ネコ、いえライオンの格好をした女の人、紗雨と同じ趣味サメ!?」
桃太と紗雨が驚きに目を見張る中……。
『問題です。ウメダの里で一番人気の鍋料理は?』
「す、スキヤキだろっっ」
モヒカンが雄々しい少年、林魚旋斧は珍回答を披露してしまう。
『正解はおでんです。罰ゲームのスフィンクスビーム!』
「あんだばあああっ」
「林魚、ボーナス問題でしくじるんじゃないー!」
「サメエエエっ!?」
かくして、冒険者パーティ〝W・A〟一同は、想像もしなかったギミックに面食らったところを桃色のビームで薙ぎ払われ、スタート地点、あるいはチェックポイントからの往復を余儀なくされた。
『問題です。クマの里の特産品は?』
「やっぱり梅干しかなあ」
『正解、お進みください』
幸いにも桃太の場合、カムロと修行中、あるいは旅行中に雑談していたが故に、クマ国についてもある程度の知識があったため難なく突破し――。
『問題です。湖面が凍結することで有名なスワ湖がある里はどこでしょうか?』
「シナノの里ですね」
『正解、お進みください』
久々に羽を伸ばし、単独で探索中の焔学園二年一組の担任教師、矢上遥花は、〝賢者〟の役名に相応しく、クマ国の地理にも詳しいので苦もなくクリア――。
『一千年前の豊穣祭で、八岐大蛇とその眷族を退散させた神饌のメニューを答えなさい』
「ぐぎゃあああっ。ひとつどころか、全部言えるわい。銀河のように瞬く極彩色の豆料理と、蟻地獄のようにのたうつ米料理と、ピカピカ光る果物の盛り合わせ……う、ぷ、ヤバい。思い出したら目眩がするぞっ」
同じくコソコソと探索していた、八岐大蛇のエージェント。昆布のように艶のない黒髪の少女、伊吹賈南は祖先の記憶を引き継いだことから、トラウマに苦しみつつも解答に成功した。
『問題です。ヨシノの里で五〇〇年前から作られている酒の名前は?』
「僧坊大吟醸だね。オジサンも飲みたい」
『正解、お進みください』
他にも、クマ国への親善任務をこなすため、あらかじめクマ国の歴史や文化について調べていた呉栄彦や――。
『問題です。地球とクマ国の間にかけられた転移門を使う際に求められる許可証の名前を答えなさい』
「勘合符です。獅子央校長が教えてくれました」
『正解、お進みください』
彼の姪で、勉強家の呉陸羽なども、クイズには比較的強かった。
その一方、めっぽう苦戦する者もいる。誰であろう、それは……。
「サメエエエ、オタスケエエ!?」
「紗雨ちゃん、落ち着いて。ゆっくり考えれば解けるから!」
あとがき
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