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カクリヨの鬼退治〜追放された少年が、サメの着ぐるみ少女と共に、勇者パーティに逆襲する冒険譚〜  作者: 上野文
第八部/第三章 遊戯用迷宮〝ウメダのすごいジャングル〟
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第529話 侮れない敵、お邪魔虫ぬいぐるみ?

529


「楽しいね」

「楽しいサメエ」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたと、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめは顔を赤らめ、相方に心臓の音がばれないかドキドキしながら、一階層また一階層と地下深くへ進んでいった。


「よし順調順調」

「こんな時間がずっと続いて欲しいサメエ」


 しかし、二人はまだ気づいていなかった。

 遊戯用地下迷宮〝U・S・Jウメダのすごいジャングル〟で行く手を阻む障害は、必ずしもトラップばかりとは限らない。


「HELLO!」

「このオレンジ色のオブジェクト、モンスターなのかっ」

「でっかい顔のついたカボチャサメエっ」


 ダンジョンといえばお約束のモンスターこと、探索を阻むお邪魔虫の人形も配置されていた。

 二人が遭遇したのは、ハロウィンのジャックランタンに似せた、全長二メートル近い巨大なぬいぐるみだった。


「HELLO(お熱いカップルめ。焼き尽くしてやるぜ)!」


 カボチャ人形は、くりぬかれた目と口から炎のブレスを吐き出して攻撃してくる。

 桃太は紗雨を抱き寄せつつ後方宙返りを決めて、間一髪、灼熱の炎に飲まれることなく間合いをとった。


「当たったら、やっぱり〝振り出しに戻る〟かなっ?」

「なら、こっちも水弾で応戦するサメエ」


 紗雨が放った水の弾丸は、ジャックランタンの口へ吸い込まれるように飛んでいくが、威力が制限されているため、あたかも霧のようだ。

 カボチャ人形が吹き続ける炎の前に、紗雨が生み出した水の攻撃は容易く蒸発してしまう。


「こ、これが焼け石に水サメエ?」

「いいや、水蒸気で視界が閉ざされた。ここがチャンスだ」


 紗雨は怯んだものの、桃太は勝機を見出して突貫。


「紗雨ちゃん。攻撃の鬼術は最低限に、肉体強化に集中して!」

「桃太おにーさん。おまかせサメエ!」

「HELLO(暴力はいけない)!?」


 紗雨の支援を受けた桃太は、パンチとキックのラッシュを浴びせ、お化けカボチャを退散させた――。


「やったね、紗雨ちゃん」

「やったサメー!」


 そうして辿り着いた地下一〇階だが、無数の扉に阻まれ、二人は行ったり来たりを余儀なくされる。


「あれ、この扉だけ開かないなあ」

「鍵がかかってる。どこかに隠してあるサメエ?」


 迷いながらも通れる扉を全て開けて奥へ進むと、やがて目の前に赤く塗られた宝箱が現れた。


「いかにも罠っぽいけど、どうなんだろう」

「でも、ここまできてハズレはないんじゃないかサメエ」

「そうだね。まずは、罠が仕掛けてないか確認しよう」


 桃太の役名は〝斥候スカウト〟。

 強力な〝鬼の力〟こそ使えないものの、罠の確認はお手のものだ。


「この宝箱にトラップは仕掛けられていないようだ。よし、開けるぞ」

「どきどきするサメエ」


 しかしながら、桃太が蓋を開けると、箱の内部に刻まれた梵字のような文字が輝き、ピエロ顔のぬいぐるみがあたかもびっくり箱を真似るように出現。


「MIMIMI(リア充め報いを受けろ)!」


 大きく裂けた口の中から、無数のヒモを束ねたような舌で攻撃したではないか。


「うわっ、おでんさんの術にはこんな使い方もあるのか!?」

「ええっと、これはミミック、サメエ!?」


 桃太は咄嗟にヒモのような舌を掴み、抵抗も気にせず無理やり引っ張る。


「負けるかあっ」

「サメパワー全力全開サメエエっ」

「MIMIMI( ひどっ)!?」


 桃太に紗雨も加勢し、二人がかりで舌を引っ張り続けると……。

 ピエロ顔のミミックもとうとう耐えきれなくなったのか、鈍く光る鍵を吐き出して脱兎とばかりに去っていった。

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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[一言] >HELLO(お熱いカップルめ。焼き尽くしてやるぜ)! サメ「なんかこの南瓜、乂を思い出すサメェ」
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