第527話 アメイジングな迷宮体験
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「とんでもない迷宮だぞコレ!?」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、冒険者パーティ〝W・A〟のメンバーは、遊戯用地下迷宮〝ウメダのすごいジャングル〟を探索開始直後、転がってきた岩に押しつぶされて振り出しに戻ったものの――。
「うーん。全体の構造から見て、この柱にあるでっぱりは無用の筈。怪しいですね」
「「さすが矢上先生、頼りになります!」」
次のチャレンジでは、担任教師である〝賢者〟、矢上遥花が隠されていたスイッチを発見し、岩を通路脇の溝へ落とすことに成功した。
「おい出雲。足元が揺れて進まないぞ」
「林魚。平衡感覚を研ぎ澄ませるんだ。注意していれば、耐えられるはず。って何か奥からやってくる!?」
「MEMEME⭐︎」
しかし、次に進んだフロアは床がグラグラ揺れるうえに、羊に似たまるっこいヌイグルミがじゃれついてくるというトラップゾーンだった。
「う、うわああっ。ぬいぐるみが寄ってくる、お、おれのモヒカンがああっ」
「MEMEME⭐︎」
「は、はやしうおおおっ」
切り込み役を担う〝戦士〟、林魚旋斧ら先頭グループで走っていた生徒の大半は、ぬいぐるみの海に飲まれてトレードマークの髪をぐしゃぐしゃにされながらも、幸せそうな顔で脱落――。
「くううっ。愛らしいぬいぐるみのモフモフは惜しいが、こんな危険な場所にいられるか。次のエリアに進ませてもらう」
「待て、羅生。新しい階層に入る時は、周辺の仕掛けに目星をつけて、聞き耳をそばだてるのを忘れるな」
「出雲。遊園地にそうそう罠が仕掛けられていてたまるか、あ、穴だあっ!?」
きっちり七三分けにまとめた髪が遠目にも目立つ〝黒鬼術士〟、羅生正之が中心となったチームは、ぬいぐるみゾーンを迂回して先行するも、待ち受けていた落とし穴にハマってスタート地点へ戻される――。
「こ、こういうときは頭を使わなきゃっ。ブンオー。落とし穴の偽装をはぐわよ。やっちゃいなさい!」
「BUNOO!!」
「心紺ちゃん、〝U・S・J〟の内部は安全のために、攻撃用鬼術の威力が制限されているし、すぐに修復されるから意味ないよ」
「「あーれーえええ」」
サイドポニーの目立つ才媛、柳心紺や、瓶底メガネをかけて白衣を着た参謀少女、祖平遠亜のように、式鬼や鬼術を使ってギミックを破壊し、無理やり押し通ろうとしたチームもいたが、もれなく迷宮の洗礼を浴びた――。
「出雲サン。みんな、はしゃぎすぎですよ。遊園地みたいなものです、平常心を守れば怖くない」
「そうだね、関中。って、後ろから風が吹いてきて、足元が急に川になった? 無理だこれええ!?」
「サメエエ、泳ぎ出したサメは急に止まれないサメエっっ」
〝斥候〟の桃太や、探索スキルに長けた〝戦士〟の関中利雄らは、彼や彼女達の失敗から学び、冷静に罠を避けて進んだものの……。
フロア一帯の床と空気が突如、激流のように動き始めて、サメに変身して先行していた建速紗雨と共に壁に激突。
ぶつかった場所に人間サイズの穴をあけるお約束のギャグシーンを幻視しながら、またしても振り出しへ戻された。
「肝を冷やすアトラクションが満載じゃないか。た、楽しいし、訓練にもなるけど、期限の一週間どころか、一か月かけても探索が終わらないんじゃ?」
あとがき
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