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第524話 氾濫あるいは、反乱対策の計画

524


(なんだ、今の二人の言い方は? カムロさんもおでんさんもヒスイ川とやらが氾濫するのじゃなくて、地球日本で八大勇者パーティがやらかしたように、誰かが反乱するみたいに聞こえるぞ)


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、牛頭に似た仮面を被る異世界クマ国の代表カムロと、一千年以上の時を生きる付喪神つくもがみにして屋台の主人、田楽でんがくおでんの尋常ならざる会話に耳をそばだてた。


「カムロ。応急処置をするのはいいが、ハンランに備えて堤防は用意していたはずだろう。なぜ今、暴発すると断言できる?」

「おでん。先日、ヨシノの里でゴタゴタがあっただろう。あの巻き添えで、〝一帯の備え〟が軒並みやられた」


 桃太は、二人の符牒ふちょうだらけの秘密会話にハッと息を呑む。


(カムロさんのいうゴタゴタとは、俺たちが捕縛した七罪業夢ななつみぎょうむさん達、地球日本の元勇者パーティ〝K・A・Nキネティック・アーマード・ネットワーク〟がヨシノの里を乗っ取ろうとした事件に違いない。あれがきっかけで、より広範囲な警備体制が損耗したということなのか?)


 桃太の推理は当てずっぽうながら、真相に迫っているようだ。

 カムロとおでんの顔色が悪くなるに比例して、ハンラン――あるいは反乱の輪郭りんかくが明らかになってゆく。


「おいおい〝一帯の備え〟がやられたと言っても、ヨシノの里とキソの里は離れすぎているだろう。別の原因が絡んでいるんじゃないか?」

「さて防災だからね、繋がっているものさ。ただ、自由に顔を変えられる不審者がうろついているようで、アカツキたち防諜部隊ぼうちょうぶたいヤタガラスが捜索中だ」


 カムロとおでんの会話に出てきた不審者は、桃太にも覚えがあった。


(そう言えば相棒、がいも最初は葉桜はざくらさん達を騙し、ヨシノの里を乗っ取ろうとしたのは、コピー能力者ではないかって疑っていたんだ。実行犯だった業夢さん達には他人に長時間化けられるほどの、高度な変身能力はなかった。ひょっとして黒幕はもうひとりいたんじゃないか?)


 桃太はいよいよ先の戦いの真相に踏み込もうとしたが、残念ながら時間が足りなかった。


「わかった、承知したとも。ウメダの防衛結界セキュリティは、たとえ八岐大蛇であっても容易には破れない。預かった子供達が何者かにすり替わられる心配はないさ。存分にヒスイの災害対策に専念して欲しい」

「ああ、おでん。君の腕を信じてるよ。もっとも来年の勝負は僕が勝つけどね」

「言ってろ。わしはウメダの里から出られないが、訓練設備にはこと欠かない。来年も、もちろん勝利をいただくとも」


 カムロとおでんは〝災害対策〟についての結論を出したらしい。

 二人で右拳を突き合わせて、ニカっと笑った。


「カムロさん、俺になにか手伝えることはありませんか?」


 桃太はとっさに手を挙げて、師であるカムロの力になりたいと助力を申し出たが、やんわりと押し留められた。


「クマ国の防災は僕の仕事だからね。そして、桃太君は冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟の代表で、焔学園二年一組の一員だろう? 今はかけがけのない思い出を作るといい。最初は、このおでんの屋台からかな。長年の経験だけあって絶品だぞ」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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[一言] >このおでんの屋台からかな。長年の経験だけあって絶品だぞ 栄彦「堪能してますぞ(カムロ秘伝の酒を飲みながら)」
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