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第522話 迷宮踏破の賞品

522


「ふふふ。そう褒めても何も出ないと言いたいところだが、私の〝U・S・Jウメダのすごいジャングル〟は一味違うぞ。カムロのように地下三〇階にある最奥の記念碑まで辿り着いたものは、迷宮の主人である私が可能な限りの願いを叶えてあげよう。さすがに死者の蘇生や、不老長寿ふろうちょうじゅのような奇跡は無理だが、お金に素材、道具、ちょっとした〝鬼神具きしんぐ〟くらいなら用立てよう」

「「ええーっ、本当ですか!?」


 遊戯用地下迷宮〝ウメダのすごいジャングル〟の運営者、田楽でんがくおでんが赤いサマースーツから伸びる白い腕でガッツポーズを決めながら宣言するや、広場に集まった冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟の団員達は歓声をあげた。


「な、なんでも願いが叶うだって? このチャンスは見逃せない。ヨシノの里特産品〝僧坊大吟醸そうぼうだいぎんじょう〟、日本円換算一瓶三〇万円をあびるほど飲んでみたい」


 最年長の呉栄彦くれはるひこは、顎の無精髭にたれたよだれを拭きながら、クマ国でも有名な高級酒が欲しいと意気込み――。


わらわだって高級エステに行きたいし、化粧品も欲しい。服も買いたい。金さえかければチンチクリンな格好ともおさらばよ!」


 地球とクマ国を侵略するモンスターの首魁しゅかい八岐大蛇やまたのおろちのエージェントである伊吹賈南いぶきかなんは気合いを入れるあまり、昆布のように艶のない黒髪を逆立てて、怪物を連想させるオーラを放ち――。


「こほん。く、車があったら色々と便利になりますよね。買い物とか、デートとかっ」


 焔学園二年一組の担任教師である矢上遥花やがみはるかも、豊かな胸元から取り出した財布を開いて、ほっと息を吐き――。


「洋画に出てくるような大型バイクって乗ってみたいよなあっ」

「最高級の釣り具が欲しいっ」


 一般家庭出身の林魚旋斧はやしうおせんぶ関中利雄せきなかとしおも、降って湧いたチャンスに目を輝かせる――。


「コケー。わたくしは、六辻の家を追い出されたので、住む場所が欲しいですわーっ」

「栄彦おじさまの家にずっとお世話になるわけにはいきませんし、アパートを借りる資金欲しいなあ」


 夢見がちな団員達がいる一方、六辻詠ろくつじうた呉陸羽くれりうのように切実な者もいたし――。


「お金、お金かあ。実は実家の資金繰りが危なっかしいのよね」

「き、奇遇だな。六辻と七罪がやらかしたから、うちも。個人的には新しいロッドも欲しいんだがなあ」


 名門出身であるはずの、活発なサイドポニーの目立つ少女、柳心紺やなぎここんと、神経質そうな七三分けの少年、羅生正之らしょうまさゆきは、実家のしがらみから逃れられず――。


「ストーカー、石貫満勒いしぬきみろくから身を守るために、そして出雲君の力になるために、私も〝鬼神具きしんぐ〟が欲しい」


 強敵に狙われる、瓶底をメガネをかけて白衣を着た少女、祖平遠亜そひらとあも、ひときわ強力なお守りを欲していた――。


「夢が広がるサメエ。おでんオネーサンは、秘蔵のサメ映画とか持ってないかサメエ?」


 もっともクマ国人である、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼きんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめだけは、平常運転でのんきなことを言っていた。


「そういえば」


 桃太は仲間達の望みを聴きながらふと思い立ち、生徒達から離れた屋台の側でカムロと談笑していたおでんに尋ねた。


「おでんさん。差し支えなければ教えてください。カムロさんは、ウメダのすごい地下迷宮の最下層にある記念碑まで辿り着いて、いったいどんな願いを叶えてもらったんですか?」

あとがき

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[一言] >カムロさんは、ウメダのすごい地下迷宮の最下層にある記念碑まで辿り着いて、いったいどんな願いを叶えてもらったんですか? カムロ「残業を終わりにして欲しい!」 おでん「その願いは私の力を超えて…
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