第519話 遊戯用迷宮〝U・S・J〟の、恐るべき修復能力
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「みんな、改めて紹介しよう。田楽おでん。彼女こそ、ウメダの里の遊戯用地下迷宮、〝ウメダのすごいジャングル〟の運営者だ」
西暦二〇X二年八月二五日正午。
牛の仮面をかぶった異世界クマ国の代表カムロが、おでん屋台の主人である赤いサマースーツを着た女性を改めて紹介すると――。
「紹介にあずかった、田楽おでんだ。私のことは、気軽にお姉ちゃんと呼んでくれたまえ」
鴉の濡れ羽がごとき黒髪の美しい麗人おでんは、顔に似合わぬ突飛な発言をまたも繰り返した。
「「は、はい。おねえちゃんですねっ」」
しかしながら、額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太を含む冒険者パーティ〝W・A〟の団員達は、おでんとカムロのクマ国最強決定戦に圧倒されたため、お姉ちゃん呼びを――受け容れた。
そして予め聞いていた桃太や、引率顧問兼、担任教師の矢上遥花らはともかく、他の生徒達はおおいに驚いた。
「遊戯用地下迷宮なんてあるんだっ」
「テーマパークみたいなダンジョンなのかな?」
「それにしても派手な名前だよね」
そんな生徒達の声が耳に入ったのか、カムロがおでんの前に一歩踏み出して詳細を語り始めた。
「地球日本のU・S・Jに略称こそ似ているが、〝ウメダのすごいジャングル〟だなんて、大げさな名前だと思うだろう? ところが本当にすごい迷宮なんだ。さすがに異界が重なったカクリヨほどではないが、里の地下一帯を網羅している上に、地下三〇階という驚きの深さだ。目立った特徴としては、構成材があたかも熱帯雨林のように複雑に絡み合って相互作用しているから、自動的に再生するんだ」
カムロが自信満々で説明すると、彼がおでんとの戦闘で駅前広場にあけた半径五〇メートルを超える大穴は、樹木の根のように伸びる土と石によって埋め尽くされた。
ウメダの里は一呼吸もしない間に、石畳が敷かれた綺麗な姿を取り戻したのである。
「天然自然のジャングルではこうはいかない。これぞ人工物ならではの強みってやつだ」
「「うわあああーっ」」
桃太達は目を大きく見開いて驚いたが、おでんはカムロの説明だけでは不服だったらしい。
「おいおい、カムロ。広さと掃除機能だけを褒めてどうするんだ。
わしが創りあげた〝ウメダのすごいジャングル〟は、中のアトラクションも当然ながら凝っている。
様々なトラップで遊んだり、トロッコに乗って速度を楽しんだり、地下植物と泉が織りなす光景を堪能したりと様々な非日常を体験できるフロアが山盛りだ。
鬼術の威力は、里一帯に張り巡らせた結界で、〝一万分の一〟以下に抑えているから怪我の心配も無い。地上には出店だってあるぞ。今の時期のオススメは冷やしおでんだな」
「「すごい、本当に遊園地みたいだ!?」」
あとがき
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