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第518話 意外な決着

518


「さあ幕引きといこうか。〝生太刀いくたち草薙くさなぎ〟!」

「勝つのはわしじゃ。〝死と再生の夜祭り(ヴァルプルギスナハト)〟!」


 西暦二〇X二年八月二五日の、太陽が南に昇る頃。

 牛頭を模した仮面をかぶる白髪の幽霊カムロが放つ万象を薙ぎ払う衝撃波と、赤いサマースーツを着た麗女、田楽でんがくおでんが槍の穂先から生み出すピンク色の光線地獄は、互いを喰らいあいながら対消滅した。

 しかし、その余波はあたかもハリケーンとなってウメダの里の敵前広場で荒れ狂い……。


「まずいっ。〝生太刀いくたち草薙くさなぎ〟! って、いつもと違うぞっ」


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたが、ウメダの里一円を覆う結界に弱体化されつつも、カムロ直伝の必殺技を放って拡大を阻止。


「「う、うわあああ!? 防御術を使ええっ」」


 冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟の少年少女達がそれぞれのやり方で里の被害を押し留める中――。

 耳をつんざくような爆音が、天地を揺らし、ウメダの里の中央広場に半径五〇メートルを超える大穴を空けた。


「もう全盛期の力はないだろうに!」

「カカカッ、お姉ちゃんはいつでも全盛期だっ」


 落下したカムロとおでんは被害の割に健在のようで、再び殴り合いながら穴から飛び出した。そうして両者が雷と文字を練り直し、再度激突しようとしたまさにその瞬間。

 ――意外な乱入者が勝負を決した。


「サメ変身からの、サメエエ・チョークスリーパー!」

「ぐぇっ、ぎゃふん」


 一度は戦場から避難したカムロの養女。銀髪碧眼ぎんぱつへきがんの少女、建速紗雨たけはやさあめが銀色の空飛ぶサメに変身して接近。

 おでんに集中していたカムロの後方に回り、人間に戻って首をしめあげたのだ。


「なるほど、鬼術に関係ない技は、里の結界で威力が〝一万分の一〟に減衰しないのか。紗雨め、意外に頭が回るではないか!」


 昆布のように艶の無い黒髪の少女、伊吹賈南いぶきかなんが拍手する中、さしものカムロも呼吸を止められては戦闘続行は叶わず、ヘナヘナと崩れ落ちる。


「ジイチャン、仮にもクマ国の代表が毎年毎年、往来で喧嘩けんかするなサメエエ。特に今回はやりたい放題、メッ! サメエ」

「ごめん。それは、そう、だね」


 紗雨はおでんに向かってカムロの頭を強引にひきさげ、自身も深々と頭をさげた。


「おでんオネエチャン、うちのジイチャンが迷惑をおかけしたサメ。この通り、ごめんなさいサメ」


 そんなカムロと紗雨の様子を見て、おでんも毒気が抜けたらしい。ゲホゲホと咳き込むクマ国代表に向かって手を差し伸べた。


「すまんな、紗雨。わしもやり過ぎた。カムロ、〝我が妹〟の顔に免じて暴言は許そう。じゃが、孫に頭をさげさせるなんて情けないぞ。それにまた白髪が増えたようじゃないか、性格が悪いから老けるんだぞ」

「アイタタ。紗雨はお前の妹じゃないし、僕の孫でもなくて大事な養女むすめだよ」


 カムロは右手で彼女の手を取り、左手で袴の土ぼこりを払って立ち上がった。


「みんな、改めて紹介しよう。田楽おでん。彼女こそ、ウメダの里の遊戯用地下迷宮、〝ウメダのすごいジャングル〟の運営者だ」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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[一言] ちんどん勇者「こちらも関係者が馬鹿をやって申し訳ない」
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