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第514話 異世界クマ国の頂上決戦!?

514


(あ、れ? おでんさんの体さばき、どこかで見たような気がする?)


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたは、牛頭を模した仮面をかぶる和服姿の老人カムロと、赤いサマースーツを着た麗人おでんの激突に魅入られつつも、胸中に奇妙なひっかかりを覚えていた。


(軽やかに跳んだら跳ねたり……、あの体の動かし方は、ひょっとして石貫満勒いしぬきみろく、か?)


 桃太の脳裏に、異世界クマ国へ来る前に交戦した、鉄塊のごとき大剣を振るう青年のどっしりした姿が浮かぶものの、首を大きく横に振る。


(いや、よく見ると違うな。むしろ満勒の持つ大剣が姿を変えた、日本人形みたいな女の子ムラサマちゃんの体の動かし方と、おでんさんの体さばきが似ているんだ)


 ムラサマもおでんも、一千年前から生きていると自称している。


(ひよっとして顔見知りなのかな?)


 桃太が思考を巡らせる間にも、カムロとおでんによる野試合は進む。

 二人ともフォーマルな服装とは思えぬほどに躍動的で、あたかも天災がぶつかるような凄絶な荒々しさに満ちていた。


「おいおいっ、ひょっとしておでんさんって、あの痴女、いやセグンダさんより凄いんじゃないか?」

「いやいや、林魚。サマースーツは、ビキニアーマーよりは常識的だ」

「いや待ってくれ。ロングスカートの裾からチラリとのぞく足の色気は丸出しに勝るのでは?」

「「それだっ!!」」


 桃太のクラスメイトである、モヒカンが雄々しい林魚旋斧はやしうおせんぶら焔学園二年一組の男子生徒は驚きのあまり、斜め上の敬意を払っていた。


「な、生身であのパワー、うちらの着る〝蒸気鎧パワードスーツ〟なんて要らないじゃないですか」

「コケーっ。わたくしの全力より強いですわ。通常攻撃が必殺技とかおかしいですわー」


 くれ陸羽りうや、六辻詠ろくつじうたといった女子生徒もまた、常識からかけ離れた二人の戦闘に興奮を隠せない。


「おでん、愛用の杖もなしでよくやるっ」

「ハッ。みずち……ガンバンテインの力を借りるまでもない。徒手空拳で充分だ」


 生徒達の視線を一身に集める中、おでんは文字を足場にしながら、空中で独楽のようにくるくると回りながら蹴り上げて、隙ありと見るや両足でカムロの脇を絡めとるようにして投げ落とした。


「口が悪いなっ。自称とはいえ一〇〇〇年以上、ウメダの守護者として生きてきたんだろう。年相応の慎みを身につけたまえよ。体は大人、頭脳は子供だなんて恥ずかしいと思わないのか?」


 投げ飛ばされたカムロだが、動きにくい黒染めの紋付き袴(もんつきはかま)にもかかわらず、片手で逆立ちして着地。

 お返しとばかりに間合いに入ったおでんの袖をつかんで竜巻のように勢いよく投げ返す。


「半世紀以上続けたオーバーワークで、メンタル絶不調な半病人がよく言った」


 が、おでんもさるもの。梵字ぼんじのような文字をロープのように伸ばして地面に固定するや、空中から音もなく舞い降りて、蹴りを浴びせかえす。


「カムロ。付け焼き刃の礼儀を説く前に、そのブラック残業がおかしいと猛省したまえ」


 二人は丁々発止とばかりに挑発を繰り返しながら、片や衝撃波、片や空中に刻まれた文字で武装した手足を打ち合わせ、そのたびにウメダの広場をズタズタに引き裂いてゆく。


「カムロ様頑張れ」

「おでん様負けるな」

「今年のクマ国で一番強い方を決める頂上決戦だ。見れて良かった」

「今回はどっちが勝つかな?」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ドゥーエから習ったなら、おでんからしてみれば孫弟子ですねぇ 2「つまりバアサンで間違いないわけでゲスな」 おでん「ふん!(本気の一撃)」
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