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第511話 ウメダの里到着

511


 額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太いずもとうたと冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟は、牛頭に似た仮面をかぶる異世界クマ国の代表カムロに誘われ、寝台付き蒸気機関車で七日をかけて世界各地を巡った。

 そして、西暦二〇X二年八月二五日午前。

 一行はいくつもの転移門ワープゲートをくぐり、海上にかけられた長大な鉄道橋〝アテルイ橋〟を渡って、いよいよ目的地たるウメダの里に到着した。


「さすが港町、キラキラしてるなあ」


 桃太達が乗った列車は里中央を縦断し、大理石で建てられた白い鐘楼しょうろうが立ち並び、赤、青、黄色と様々な色合いで飾り立てられた、火竜アテルイを模したらしい鉄道駅へと入る。

 クラスメイト達が荷物を手に飛び出すや否や、目にとびこんで涼やかな光景に歓声をあげた。


「海から水を引いているのか、里中に水路があるのよっ」

「橋も多くあるけど、ボートで移動する人もいるわっ」

「空を見ろよ。逆ピラミッド型の岩の上に建つ神社みたいなのが浮かんでいて、滝みたいに水が流れているぞ」


 異世界クマ国にあるウメダの里は、地球日本の大阪北部にある繁華街というよりは、イタリアにある複数の島で構成された都市ヴェネツィアを連想させる水の都市であった。


「さあ桃太君、降りようか。この里は、少し気合いが必要なんだ」

「はい。こんなに凄い都市だと、気後れしちゃいますよね」


 桃太達は牛に似た仮面をかぶり、黒染めの絹糸で裁縫された紋付袴もんつきはかまを羽織る足の見えない幽霊、異世界クマ国代表のカムロに案内されるまま、駅前にある噴水広場へ出ると、獣耳や尻尾の生えたウメダの里人達が笑顔で出迎えてくれた。


「「カムロ様、おかえりなさい!」」

「「出雲桃太様、冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟の皆様、ようこそウメダの里へ!!」」


 桃太達がにこやかに手を振って歓迎に応えていると……。


「皆、通してくれるかい?」

「「おでんさま? わかりました」」


 石畳の上に設置された『冷やしおでん』と書かれたのぼりの立つ屋台から、一人の女性が進み出ると、まるで海が割れるように人々が彼女の為に道を開けた。


「ようこそ異世界、地球の冒険者。歓迎するよ! わしはこのウメダの里で屋台を営んでいる、田楽おでんという者だ」

「すごい、綺麗」

 

 おでんを名乗る女性は、鴉の濡羽ぬればを連想させる美しいストレートヘアを背中まで伸ばし、鼻筋の通った顔立ちと白皙はくせきの肌は人間離れするほどに輝いている。ワインレッドのサマースーツを着て、真紅のロングパンツをはく彼女の容貌は、男女問わずうっとりと見惚れるほどに美しかった。


「カカカっ。どうかわしのことは、気軽にお姉ちゃんと呼んで甘えて欲しい」

「「おねえちゃん!?」」


 しかしながら、彼女の素っ頓狂なセリフを聞いて、桃太を含め冒険者パーティ〝W・Aワイルド・アドベンチャラーズ〟のほぼ全メンバーが腰砕けになった。

 おでんは、そんな客人達の反応にも動じることなく両手を広げ、宣言した。


「わしは、クマ国の前世界と前々世界、二度の世界滅亡を体験した付喪神つくもがみで、クマ国最年長の住人だ。これはもうクマ国、そして、クマ国と結びついた異世界地球に生きる全ての姉だと言っても過言ではあるまい!」

あとがき

お読みいただきありがとうございました。

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[一言] 某姉を名乗る不審者「いいえ、私こそがお姉ちゃんです!」 某アラフィフ「姉が同時に二人いても矛盾しないのではないかな?」
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